第29話 どエルフさんと謎かけ

「朝は三本足、昼は二本足、夜は四本足の動物とはなんだ」


 谷に響く不気味な声。

 砂漠を越えての旅の終盤、峡谷へと差し掛かった男戦士と女エルフの一行は、突然そんな得体の知れない声に襲われた。


「なんでしょうか?」

「声はすれども姿は見えず、か。死霊か、それとも精霊の類か――モーラさん!!」

「ううん、確かに、そんな気配は感じるけれど」


 辺りを見回しても、それらしい姿は見当たらない。

 この手の感知に優れている――精霊との相性がよいエルフからしても、その声の主は見つけられないようだ。


「よほど高位の精霊か、はたまた、そういうモンスターか」


「朝は三本足、昼は二本足、夜は四本足、だ――。はやく答えよ」


 せかすように再び声が谷に響く。

 まっさきに顔に汗を滲ませたのは、女修道士シスターであった。


「答えたほうがよいのではないですか?」

「いや、迂闊に答えると、それが原因で呪いをかけられるかもしれない。ここは慎重に行くべきだ」

「というか、なんなのかしら。そんな日の位置によって、足の数が変わるような生き物なんていたかしら――」


「あれ、もしかして、わかっていなかったんですか?」


 シリアスな顔から一転、きょとんと眼をしばたたかせる女修道士。


 分かるのか、と、男戦士が尋ねると、女修道士はそのしいたけお眼目をしばたたかせて、もちろんですと答えて見せた。


「答えは人間ですよ」

「いやいや、それなら順序が逆でしょう。朝は子供でハイハイ四本足、昼は大人、夜は老人で杖をついて、っていう」


「違いますよ!! いいですか、朝は○立ちで三本足、昼は性癖を隠してそ知らぬ顔二本足、夜は四つんばいになってご主人様に愛を求める!!」


「ストップ。分かった、そうだね、そういう人間も居るかもしれないわね――」

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