第15話 どエルフさんと装備3

「そういえばモーラさんは新しい装備はどうするんだ?」

「え、私? 私はそうね――正直、武器関連はもう充実してるから、防具を新調しようかしら」


 なるほど、と、男戦士。

 彼はさきほどまでエルフ娘と女シスターがいた、魔法職向けの装備がおかれたスペースへ向かう。


 しばらくして、彼が持ってきたのは上質の黒毛皮でできた魔法のローブであった。

 ぴょっこりとそのフードには、猫の耳のような突起がついている。


「どうだろうか。これなんてモーラさんに似合うかと思うんだが」

「うぇっ!? いやいや、無理無理ムリよ、そんな可愛らしいの。私、三百歳だよ!?」


 エルフの三百歳が人間でいうところの何歳にあたるのかピンと来ない男戦士は、少し残念そうに肩を落とした。


「では今度は私が。さきほどのお礼に選んで差し上げますわ」

「ちょっと、コーネリアまで!!」


 るんるんと、鼻を鳴らして男戦士と入れ替わりでスペースへと入った女修道士。

 心配だなぁとエルフ娘は目を細めた。


 まぁ、つい先ほどのことを考えれば、あまり彼女も人のことを言えない。


「モーラさんが持っているエルフの気品さ、その端正な顔からにじみ出る知性」

「いやぁ、そんな、照れるわね」


「慎ましやかな体つきに、ウィットとエスプリが効いた下ネタ」

「うん、上げて落とすとは、アンタもほんといい性格してるわね」


「そんなモーラさんの魅力を最大限に引き出す装備。それはずばり、学者の服です!!」

「なるほど。確かにそれなら、三百歳のモーラさんが着ていてもはずかしくない」

「えぇ、そうかなぁ――」


 明らかに嫌な顔を作ったエルフ娘。

 どうにも埃っぽい響きの、学者服というのが、なんだかんだで気に入らないようだ。

 彼女も女だ、それは仕方のない反応だろう。


 しかし、そんなことはお構いなし。

 まぁまぁ、これを着てみてくださいよ、と、服を片手に女修道士はエルフ娘に近づく。


 半ば押し切られる形で、エルフ娘は女修道士と試着室へと入っていった。



 しばらくして。



「ちょっと、コーネリア!? これ本当に学者の服なの!?」

「本当ですって、ちゃんと<<女子学生の服>>って書いてありましたから」

「本当に本当!? なんかいろいろな所が短くって、落ち着かないんだけれど!?」


 押し切られるようにして試着室に入り、押し出されるようにして試着室から出てきた女エルフ。



 その格好は、ギンガムチェックのスカートに、シミ一つない純白のセーラー。

 そしてすらりとしたエルフの健脚を、美しく彩るハイサイニーソックス。


 学者服――というより、それはこちらでいうところの学生服であった。


「こんなの着ている学者なんて、私、見たことないけれど」

「いやいや、似合ってるよ、モーラさん」

「旬を過ぎた踊り子が支配人に言われて無理してる感が出ていていいですね」

「――踊り子って!! コーネリア、あなたやっぱり私のことからかってたのね!!」


 ぷりぷりと、怒る女エルフ。

 初めて着るミニスカートながら、それを見事に小さく揺らすと、絶対領域を死守する彼女に、男戦士は甘いため息を吐いた。


「あと少しで見えそうでありながら絶妙に見えない。風の流れと男心を完全に読んで手玉にとるとは。流石だなどエルフさん、さすがだ」

「ちょっと、ティト、あっち向いててくれる!!」

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