第3話 悲喜劇の判断を委ねられた話
03
「どう言う事ですかっ!」
それは、卒業式の賑やかさが収まった頃だった。
そこは、卒業式の会場から離れた会議室だった……空き教室とも言う。地理的に言えばまだ構内で、あちらこちらに卒業式と電撃的に発表された王子の「正式な婚約」に人々が浮き立つ事は致し方がないと言えただろう。
けれど、この場はそうでも無かった。
この場には校長と国王、王子、アルテミシアを初めとする「壇上にいた人々及び身内」が勢ぞろいしていたのだ。この場に呼ばれなければ気が付く事も無かっただろう。
はっきり言って、それなり程度の階級の者がこの場にあろうとすれば腰を抜かしてもおかしくはないくらいの豪華な顔ぶれである。
この場に呼ばれたアイシスも、それは判らないわけではない……しかし、それよりもこみ上げてくる感情に歯止めが効かないほうが問題だった。
「どういう事、とは?」
この場の責任者……国王ではない、いわゆる校長が気だるげな顔をしながらアイシスを見た。
今の校長は、壇上では比較的まともだったのに思い切りだらけており襟元も外して首と肩をかきこきと鳴らしている……これでも、最初に「ごきっ!」と言う音をさせて折れたかと周囲を恐慌の渦に巻き込むレベルで驚かせたのため今はそこまでではない。
……机の前ではしゃげる人と言うのは、割とこんな感じである。
「エド様、エド様は私をお側に置いて下さるって……!」
「そこまでです」
高ぶった感情を持て余し、連れられるままに訪れた先に問いただしたい相手を見つければ暴走も当然と言うものだろう。
この場に居た者は、一部を除いて冷静に判断した。
冷静でなかったのは、エンドヴェリクスとその周囲にいた……取り巻きとも未来の側近候補とも言う面々だ。実を言えば男子生徒だけではなく中身が女子の男装生徒もいたのだが、アイシスは知らないのだろうと言うのが共通意見だ……アイシスの後をくっついて歩いているユーノが教えていないのであれば、意外と直情径行にあるアイシスには知る事もないだろう。
「あなたは……」
横から声をかけられて、思わず反射的に声を荒げようとしたものの。
その相手を見て、アイシスは怯んだ。
恐らくは、それが決定打だったのだろう。
「どうして、あなたが……」
「あら、何をおかしい事があるのでしょう? 正式な婚約者として最初のお披露目をした以上、わたくしっがエンドヴェリクス様の隣にあるのは至極当然と言うものではありませんか?」
氷のような美貌と、炎の様な気性を併せ持つ。
アルテミシアを、そう評したのは一体どこの誰だったのか。
もう、アイシスには思い出せない。
けれど、それを聞いた時にアイシスは「それって単なる悪役顔の我儘娘って事じゃないの?」と思った事があるのは事実だ。
「どうして、どうしてあなたがエド様を奪うの……何でも持っていて、何でも出来るのに、どうしてエド様まで……エド様くらい私にくれたって良いじゃない!」
実際のところを言えば、アイシスにはそこまでアルテミシアについてよくは知らない。
アイシスは知らないだろうが、アルテミシアはアイシスの事を割とよく知っているのだが。
「私に酷い事をして、それなのに……」
「酷い事?」
聞きなれた言葉を聞いて、一気にアイシスは気分を浮上させる。
どれだけ辛い日々を過ごしてきたのか、どれだけ悲しい事があったのか、修学中に小出しにしてきたのだ。エンドヴェリクスもしかり、他の男子生徒達もしかり、一部そうでもない者もいたが割と同情的に受け入れられたのだ。
これは、計算をしていたとも言うし。自然とそうなったとも言える。
「ええ、そう。そうなんですエド様!
私はただ、普通に過ごしていただけなんです。でも、彼女達は私が気に入らなくて……」
悪口を言われた。
物を隠されたり壊されたりした。
ケガを負わされる事もあった。
一度ならずとも、誹謗中傷の憂き目にあった。
手を回されて必要なものが手に入らない事もあったし、出した筈の外出届が受理されていない事もあった。
等々を、ここぞとばかりに一気に放出した。
「事実なのかい、アルテミス?」
「さあ……わたくし、彼女に興味がありませんので噂程度にしか存じませんわ。
ですが、そうなりますと何故そちらの方が何もおっしゃらないのか気になりますわね」
「おや、婚姻前から浮気かい?」
「まさか……護衛であるならば職務を全うしないと言うのもおかしな話ですわ、彼……ええと、何て言いましたかしら? 騎士志望の方でいらっしゃるのでしょう?」
「ユーノは護衛じゃないわ、友達よ!」
この辺り、ほとんどすべてがアイシスの本能的な計算だ。条件反射とも言うが、いかに「今どうすればこの場を乗り切れるか」に頭の中を全力投球しているらしい……途中から、少しだけ冷静な自分自身が慌ててアイシスの暴走した本能に有力者の面々がいる事を訴えてきたのである……正直、もっと早く教えろとアイシスの絶好調で暴走していた本能が慌てふためいているのはどうしようもない。
確かに、エンドヴェリクスに言いたい事は山ほどあったしエンドヴェリクス以外の男子生徒達にも言いたい事はあった。何故なら、彼らは一部を除いて散々声をかけてきたのだ。
もしかしたら、それは単に主となる王子に近づく不審者を警戒しての事だったのかも知れない……自分で想像した事ながら笑えないが、実際に客観的な視線で見れば不審人物丸出しだろう。
何しろ、アイシスが男爵家の養子で準男爵家の子息を常に置いているのだ。実際の事を誰に説明した所で一度で理解されるとも思わないし、真実理解出来るとも思えない……かつて、懸命に二人の関係を説明した事があったが。相手に理解力が無かったのか、それともよほど常識はずれだったのか、もしくは理解する事を諦めたのかいずれかなのだろう。
それ以後、アイシスはユーノとの関係を人に説明するのを諦めたと言う過去がある。
「お友達……ですの」
いっそ憐れみさえ含ませた視線は、噂に聞いたものではないけれど。
それでも、アイシスにしてみればアルテミシアの視線はぶしつけだと感じる程度にはじっと見られていて。同じくらい、自分がアルテミシアを見つめている事には、どうやら自覚が無い様だ。
「何よ、文句でもあるのっ?」
「いいえ……わたくし『には』ございませんわ。
ええ、わたくし『には』ね」
言の葉を含めた意味に、気が付かないわけでは無かった。
ただ、載せられるべきか否かを判断するにはアイシスにとってアルテミシアと言う人物の情報が足りない……男爵家も伯爵家も、自分勝手な事ばかり言ってきてアイシスに役立つ情報を一切教えないのが問題だとアイシスは思う……善意的に解釈すれば、計画も判断もアイシスに任されていると言う見方もあるが、逆を見れば一から全部アイシスの責任にされると言う事にもなる。
「ええ、あなたはとても上手に役目を果たして下さったわ……ですから、こちらにお呼びをしたのはそのご褒美でもありますのよ?」
「……はぁ?」
アルテミシアの突然の言葉に、アイシスは何の事だかまったくもって理解できなかった……想像がつかなかったとも言う。
まるで、アイシスと言う人物をアルテミシアと言う人物が使っていたかの様に聞こえるのだ。
だが、アイシスにはまったくもって覚えがない。筆頭公爵家のご令嬢が、つい先日見つかった伯爵家で庶子となれるかどうかの瀬戸際の男爵家の養子を相手にする事など普通はない。
「あなたはご存知ないでしょうね……ねえ、想像した事はありますかしら?
かつて、貴族は同世代の異性が集う事などない事でしたの。とても、はしたない行為とされてきましたのよ……ああ、途中で言いたい事はおありでしょうけれど後になさってね? その方がまとめて出来ますもの。
ところで、若い皆様が一堂に会する様になりましたのは今から100年もたっていませんのよ。時の王妃陛下が定められたのですが……幼い頃より異性と触れ合う事がないと成長されてからも後継者問題等で色々と差しさわりがありましたの」
簡単に言えば、慣れない異性と初めての交流が結婚式で。その直ぐ後に子作りをしろと言っても無理な話……と言う事になる。
「かと申されましても、誰かにお願いすると言うわけにも参りません……淑女であれば殿方に委細お任せするようにとしつける事も可能でしょうが。その殿方が淑女の顔も見られない様では、お子などとてもとても……夫を亡くされた未亡人をお呼びした所で、その方が二心をお持ちであれば王家に波紋を呼ぶことになります。
これでも、歴史的に見ても様々な試みはされておりますのよ」
とは言っても、歴史書を紐解いてもはっきりと王家の閨事情など書いてあるわけではない。貴族特有の言い回しと言うか、ほとんど暗号の域なのだ。医学書とかならばまだしも、王族を含めた高位貴族の夜の寝室事情など子供が読んではいけない本棚に置く以前に不敬罪で首と胴が永遠の別れをしてしまう羽目になる……それでも、時の歴史学者は手を変え品を変え歴史書に残すべく飽くなき探求心を募らせて行動するのだから「その情熱、他に向けろよ……」と、周囲に緩い目でみつめられる。
そう言う人種であり、そこから紐解き読み解く挑戦者が続くと言ういたちごっこは続くのだ。
思わず、アイシスが死んだ魚の目の様になったとしても致し方はないだろう。
正直、平民の感性とか全く関係ない所でアイシスは思った……知りたくなかった、そんな裏事情。これからまともに本を開けないではないかと。
もっとも、すでに卒業した身の上ではその必要もないのだろうが。
「しかも……殿方の世の常と申しますか、ただでさえその様な状況で。見栄を張るがために立場を顧みずに申し出る方々がお出でになる事実……その為に、お家騒動はとてつもなく数多くありましたわ。悲しい事に」
やれやれと言うアルテミシアに比べて、男性陣はどこか遠い目をしている者が続出していた……もしかしたら、そのお家の子孫なのかも知れない。
「詳しくは申しませんが、数多くのお家で様々な事が起きたと申しますわ……その間、殿方は外で遊び歩いたことが発覚次第、場合によってはお家断絶と言う事も珍しくはございませんでした。事態が収縮したのは、ほんの数年前……その間に生まれた子供達は全て血縁がある事を認められた者だけが残されている。と言うのが、現在置かれている事情が前提となります。
ですから……例え庶子であろうと血縁が認められぬ場合は保証がありませんのよ」
ぞくり、と言う気持ちと。
そんな事を言われても、と言う両方の気持ちがアイシスの中で渦巻いた。
子供は親を選べない……特に、実父の伯爵は恐らく実母に気分転換とか気晴らしとかの気持ち程度で手を付けたに違いない。よく男の言う「抵抗しない方が悪い」なんて言う言葉を吐く者はどんな階級にだって存在している……貴族は平民に逆らえば殺しても罪とされにくいし、女の腕力で男をねじ伏せれば生意気だと延々と言い続ける。周囲の男も同調して責め立てる事も珍しくない上に、そんな腕力や脚力だけで反撃出来る女がどれだけいるのかと問いただしてやりたくなる。
いつだって、被害者は弱い者だ。
そして、アイシスは必死で生きてきた。
嫌な事を言えば、生んでくれた実母は嫌いではないが生んでくれなんて頼んでいないし。実父に至っては母を襲ってくれなんて頼んだ覚えもない。当然だが。
それは、アイシスの責任ではない。
けれど、アルテミシアは当然の様に「血のつながりがあれば目こぼしをされるが、無かったら処分する」と言っているのだ。少なくとも、アイシスはそう感じた。
「そういう意味からすれば、貴方はとても役に立ちましたわ。ええ、皆さまからご褒美を差し上げようと言う話が出る程度には」
「ご褒美……?」
今の話の展開からすると、とてもではないがよい話には聞こえない気がする。
否、これでありがたく受け取りました死んでましたの可能性だってある。
そんな事になったら、だとしたら……。
「貴方は、何人かある『試しの色香』の一人で最も多い男子生徒を誑かしたのですもの。これはご褒美を差し上げなくてはなりませんでしょう?」
「違う! 私はそんな事していないっ!」
まだ、良いとは言われていない。
だとしても、もうアイシスには黙っていたいとは思わなかったし黙っているわけにもいかなかった。
このまま放っておけば、アルテミシアによってアイシスは何人もの男を手玉に取った悪女や娼婦として扱われる事になる。別に伯爵家にも男爵家にも未練も後悔もないが、だからと言って好き勝手に言われる覚えはないのだから。
「あら、怖いお顔……エンドヴェリクス様も、初めてご覧になったお顔ではございませんこと?」
言われて、初めてアイシスはアルテミシアの隣にエンドヴェリクスがいる事を思い出した。
別に、アルテミシアはいつかアイシスがそうしていた様にエンドヴェリクスへしな垂れかかる事も抱き着くこともしていない。お互いで時折、ちらりと視線を向けるだけで甘ったるい雰囲気は欠片もない……いっそ、少し余所余所しく冷たいのではないだろうか? と、そう思ってしまう程だ。
「そうだね……まあ、そう言う顔も恐ろしいかと問われるとどうだろうかとは思うけど。
我々の前では、一度も見た覚えはないかな?」
「信じてエド様! 私は他の誰かに思いを寄せた事なんてないわ、一度だって……だって、私は、あなたが……っ!」
「まあ、はしたない……淑女たる者が、非常時でもないと言うのに。その様に声を荒げるのはいかがなものかと思いましてよ?」
確かに、淑女として最初にマナー講義を受けた時に言われた事がある。
必要でもない時に、淑女は大声を上げる事も大きな口を開いて笑うこともしてはならぬと。
ただ、これには幾つかの理由があって大声をあげると警備上で護衛が何事かと駆けつける事になるとか。表情から駆け引きの時に心中を読まれてしまう事があるとか、大きな口を開けていると何かが放り込まれる事も過去にはあったそうだ。
そういった事を防止し、物事を円滑に進めるために貴族の女性達は淡々と美しくある様に変化していったのだと言う。
お茶一つとっても産地から味から当てるようになるのも、まがい物を押し付けられた時に看破出来るように。言い回しの一つ一つに使いどころがあるのは、お互いの立ち位置を明確にする為に。
個人的な付き合いならばともかく、各々の背後には「家」が存在する以上は規則なのだ。それが嫌ならば、その場から逃げ帰るしかない……アイシスに逃げ帰る場所など無くなったけれど。
「話を戻しますわ……それ以後、若い頃から殿方には学んでいただく事になりましたの。
人を惑わす才能ある方、そう言う体質の方が多くはありませんが貴族の血を持ち市井に流れました……貴方も、そのお一人ですわ。亡くなられたお母様の体質を受け継いだのですもの、伯爵は貴方に話を持ち掛けましたでしょう?」
「……知らない、そんなの」
じゃあ、あの男は。
アイシスの中にどす黒いものが滲んで来たのを感じた、それは熱く、激しくアイシスの中で渦を巻き始めた。
母を探していたと言う、あの男は。
「ですが、伯爵にも困ったものでしたのよ……皆さまと同学年の方は貴方お一人だと言うのに出し渋り期限ぎりぎりまで貴方を寄越そうとはなさいませんでしたもの。
どちらにせよ、こうして試しの色香に引きずり出されるのは判りきっていると言うのに……感情で動く方はこれだから困りますわ」
「どう言う、意味……?」
「やっと見つけた貴方が、まさか思いも寄らぬ所にいて。しかも、貴方のお母様はすでにお亡くなりになっている……理想は、親子で参加していただく事でしたけれど。伯爵の憔悴ぶりには驚いたものですわ。
伯爵は、貴方のお母様をずっと探していらしたの……お母様の生まれ故郷に戻る事を、ずっと待っていらしたそうよ。でも、お母様は……」
「無理よ、母さんは私を生んで体が弱って、とてもではないけど母さんの故郷なんて……」
今まで伯爵に会ったのは、一度きり。
だから、普段がどんな人なのか憔悴していたかなどと言う事は知らないし判断もつかないのは当然と言うものだろう。だから、きっと生まれ故郷に帰るはずだと信じて待っていたと言う伯爵の間抜けぶりにも納得しないわけでもない……ただ、実母の故郷は地名までは知らないのでわからないのだ。
「ええ、そうでしょうね……後で色々と判りましたわ」
「調べたのっ?」
「当然でしょう? この国の王子の側に這いよるモノは全て調べられますわ。それを調べ上げる事も、わたくしの課題でしたもの」
「課題……?」
「ええ、この学校に通う将来を嘱望されている貴族の子は全てが試しの色香の対象者ですわ。
未来を担う者として、己の定めた者以外へ心を移すことも。その相手を見誤る事も減点対象ですもの……わたくしは諸手を挙げて合格をいただきました。
エンドヴェリクス様は……おまけでぎりぎりの合格ですわね」
「厳しいな、アルテミシアは……」
「当然ですわ、国の為にあらねばならぬ立場だと言うのに……嘆かわしい。陛下と全く同じ道を歩まれるなど……」
「あの人は、この試しにも見事受かったんだろうね……」
ずき、とアイシスは心が痛んだ。胸が痛んだ。
エンドヴェリクスは年の離れた王子だから、すでに立派に王太子をしている兄や姉に叶わない。判っているのに、周囲はエンドヴェリクスにつく貴族がいる事が全く理解出来ないと言うのだ。
確かに、アイシスは王太子に直接会う機械などないし。どんな人物かなど知らないけれど、だからと言ってエンドヴェリクスが決めつけるには間違っていると言った事がある。
「王太子様は、どちらかと言えば更衣室に入り込む輩と他の狙わていた方々をお守りする方が忙しくて御自身に試しをされていたと言う認識はなかったそうですわ……どれだけなのか、王太子様のドレスの中に入り込めば襲い掛かる機会があると思った輩がいたほどだそうですけれど」
「襲う方も襲う方だけど、襲われる方も何をしているんだか……」
「王太子様は、特に御公務に置いてドレスをお召しになる事は少ないのですけれどね……」
「ドレス? 王太子様が? え?」
「ああ……我が国の王太子殿下はエンドヴェリクス様の姉君ですわ。アリンナ様はとても明るく朗らかで……」
「いや、あれは野生児だと思う……」
この国の王太子は、諸国で歌われるほどの「完璧なる王子」と呼ばれている。
ただし、女。
この国は女性にも王位継承権があるが故の悲劇……喜劇、かも知れない。
確かに、いかに外見が完璧な王子であろうと周囲の古い因習に捕らわれた者にしてみれは不安でたまらないのだろう……自分たちの保身の為にも。
「わたくしはね、思いますのよ……確かに、貴方には亡きお母様より受け継いだ体質がある。けれど、それだけならば今頃ここにはおられなかった事でしょう。
貴方がどんな生活ぶりをしていたのかは調べましたわ、ですからそれだけが貴方の持つ魅力と言う訳ではないと言う事も判りました。
本来持っている異性を引き付ける体質に合わせて酒場の女給としての技術が、そこまで貴方を魅力的に見せた、と言う事ですわ」
「違う、私は……」
「はあ……ねえ、貴方?
まだ、貴方は今。わたくし一人が貴方と話していると言う皆様の優しさがお判りになりませんの?」
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