第42話

      ロータリーは急ぎ足?


 それから俺たちは、路上ライブを計画した。

 みんなやる気満々って感じで、特にピンク頭は練習のある土曜日には毎回、福島から出てきたんだ。当たり前って顔でメンバーになっちまってるのも不思議なことだけどな。


 更紗はツバサに付っきりで、テンポがくるうと何度もやり直しをさせた。

 そうして、何度目かにかっこいい帽子とサングラスを持ってやってきた。ツバサにかぶせると

「最新兵器だよ」

 と言って笑った。

「なんでなんでぇ~?」

 と脇でツバサの帽子やサングラスを自分にかぶせたりしてポーズをとってる由梨花に

「集中できる時間が短いみたいなの、普通の人より。その時に視界に入った人や物に気が取られちゃうとテンポが狂うんだと思う」

 ぶんぶんと頭を振って、ピンクの髪の毛を揺らす由梨花。

「注意力散漫ってことだね!」

 俺とナオトは顔を見合わせて、ふ~んとうなった。とうのツバサはまんざらでもない顔でうれしそうだ。

 だけど不思議なことに、帽子とサングラスをかけるとツバサのドラムは最強になった。

 アップテンポもスローな曲も、安定したリズムを刻む。

 本当にそれだけで、こんなにかわるもんなんだろうか。気が散るってツバサはどこ見て何を考えてたんだろう。

「おっまえ、なんでそんなことわっかんのよぉ~?すっげえなぁ、尊敬しちまうよ」

 とナオトが言えば

「私の更紗のこと、そんなにほめないでよぉ~、照れちゃうわぁ~」

 と由梨花がめちゃめちゃうれしそうに身体をしならせる。

「そんなに喜ばなくても、わた飴をほめたわけじゃねぇよ」

 この二人のやり取りはいつでも行ったっきりで終わりが無い感じですかね。

「みみみ、みんなも帽子とかかぶる?なんだかかっこよくなった気がし、しちゃうよ」

 黒のつばのついた帽子は、なかなかツバサに似合ってたし、サングラスも柔らかいツバサの顔立ちをシャープにして、かっこよかった。

「俺は、グラサンかけようかなぁ」

 ナオトはたまにサングラスをかけてることがあるから、いいかもね。

「俺は、いいや」

 と言うと

「あたしもこのままでいい」

 と更紗と目が合って笑った。なんだか、いろいろなことがあって今本当のバンドが結成されたような気がする。

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