第22話

 俺らのオリジナルのライブに持って行く曲が、出来上がった。みんな気に入っていたし、なかなかの曲だった。


 ちょうど、俺らみんな春休みに入る頃にライブの日程が組まれていた。大学は休みだったが、更沙は、まだ学校があった。

「学校なんて、行かなくってもいい」

 そんな言葉をぽつんとつぶやく更沙にナオトがはしゃいだ声をあげた。

「そんでもって、いろんな情報が集まっちゃったわけよ。へっへ~」

 また、もったいぶってこの言い方。

「はやく、話せよ!なんだよ」

「どうした、したの?な、なにがわかったの?」

 俺たちにまあまあと、手を振りながらナオトはしたり顔で説明した。

「親父の会社の職人さんがさ、良く出入りするとこ行ってさ、俺、コーヒーなんか差し入れしちゃってよ」

 なんだ、こいつは。なにがわかったのか、さっさと話さないと俺まじ切れそう。

 俺の顔見てあわててナオトが言った。

「由梨花ってやつの家の事だって。親父が結構ぼんぼんでさ、かなりやばい金儲けの話にのっちゃってそんではじけちゃったみたいだぜ。で、その差し押さえなんかで出てきたのが柳ってやり手の弁護士だって話。あれ、柳って聞いたことあったっけって俺思ったわけよ」

 じっとナオトの口元をにらむようにして見ていた更沙は

「クラスの柳、そういえば父親弁護士って聞いたことある」

 うれしそうにナオト。

「な?な?やっぱそうだろ?だから、由梨花が財布捨てろって言ったのよ、きっと」

「じゃ、どうしてあたしが捨てたって言ったんだろ?」

 少し引きつって笑うナオトは、中身が全部透けて見えてるみたいだぜ、ほんと。

「それは、うぅ~ん、わかんねぇ~」

 まあ、こいつなりに更沙のこと心配して話聞きだしてきたって事は認めておこう。

「まあナオトのおかげで、一歩は先にすすんだじゃんか。事実捨てたのはお前なんだし、後は直接聞いてみるんだな」

 心配そうにみんなの顔を見ていたツバサが何度も首を振って

「そう、そう、そうだよ。福島行くんだから、会うといいよ。きっと会えるよ」

 最近、こいつスムーズにしゃべる時多くない?

「うん、そうする」

 上を向いて力いっぱい、更沙はめずらしく声を大きくした。


 そんなこんなで、新曲も仕上がって準備も整ったところで金曜日の夜中、俺らは出発した。

 ナオトはワンボックスの車を借りてきたから、余裕を持って荷物も積み込めた。それでも、後ろの席は小さくなって座らなくちゃならなかったけど。

「おぉ~い!そろそろサービスエリアだぜ~俺休憩してぇんだけど~」

 運転しているナオトの声に、爆睡中のみんなが飛び起きた。

「ご、ごめんよナオトばかりに運転させちゃって。ぼく免許持ってないから、なのに寝ちゃって」

 ツバサが気にしてる。俺は、ここから運転代わるつもりだったからゆっくり眠らせてもらったけどね。

「次俺、運転すっから」

 嬉しそうにナオトは、

「じゃ、ここで何か食ってもいい?俺、腹減っちゃった~ぺっこぺこだぜぇ~死にそう~」

 食ったら寝てろって。

 みんなで、早いけど朝飯食うことになった。例によって、ナオトは三人前くらい食っていた。

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