さらさの季節

第17話

    一人ぼっちの教室で   ~さらさ~


 由梨花が転校してから、あたしは一人を嫌って言うほど感じながら過ごした。

 いつでも、何人かの友だちを連れてあたしのそばにいた由梨花は、もういなかった。

 考えてみると、なんのとりえもないあたしの側に人気者の由梨花がいた事の方が不思議だったのかもしれない。ただ、寂しさをそれほど感じなかったのは、教室にもう一人周りを拒絶している影がいたから。

 柳美奈は、いつも一人で本を読んでいた。たまに、周りの女子から嫌がらせのように読んでいる本をはたかれて『あら、ごめんね~、人がいるのわかんなかった~。影薄いんだも~ん』なんていわれたりした時も、黙って落とされた本を拾っていたんだ。

 あたしの方は、由梨花が転校していった翌日まず学校に行ったら上履きがなかった。他にも、消しゴムがなくなってたりシャーペンがなかったり、教科書がゴミ箱の中に入ってたりした。

 けど知らん顔して体育館履きを履いてたし、机の落書きも気がつかない振りしたしゴミ箱の中から教科書を拾った。

 我ながら、そこまでの悲壮感がなかったのは不思議だった。

 そうしているうちに、三日すぎたあたりからみんないじめるのを忘れたみたいだった。

 反応が少なかったから面白くなかったのかもしれない。

 だけどあたしが悲しかったのは、相変わらず誰とも話をすることなく一人ぼっちだった事より由梨花がいない事だった。

 そんな時、柳を見ることが多くなった。

 彼女は難しい本を読んでいたし、先生も一目置くほど勉強ができたから期待値が高かったのかもしれない。

 かなり、特別扱いされてたんだと思う。問題集も他の子と違うものを渡されてたし授業中でも、なんだかわかんない難しそうな参考書を読んでても何も言われなかったから。

 きっと、すごい学校に進学すると思われてたんだろうな。この学校からじゃ考えられないくらいのすごく頭の良い学校。  

 そんな意味で、あたしと違って柳美奈はおとなしいわりには目立ってたんだ。


『あんなやつ、少し悲しい思いしたほうがいいんだ。いつでも優等生づらして大っ嫌い!』

 由梨花の言葉を思い出した。

 あたしの大好きな由梨花は、そんな事を言うような子じゃなかった。今までだって人の事を悪く言ったり嫌いって言う事なんてなかったのに。

 だから誰からも好かれてたし人気があったの。そんな由梨花が好きだったし、そんな風になれたらっていつも思ってた。

 絶対、あたしは由梨花にはなれないってわかってたけどさ。

 あの時、あたしは面食らってしまって由梨花の言うまま柳の財布をゴミ箱に落としたけど、後悔していた。なんであたしは由梨花がそんな事を言うのか聞かなかったんだろうって。

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