Act.02 エンゼル・リベリオン
第31話「はんげきへの、たびだち」
――エンジェロイド・デバイス。
それは、二つの地球を守る
補給や
そして、それを手にする世界中の子供たちが祈り、願う。
本当の平和を探して求め、日夜戦う戦士たちの
そんなエンジェロイド・デバイスが、この士官用個室にも一人。
自分のマスターが不安げに、彼女の最後のパーツをはめ込んでくれる。以前は欠けていた左腕も、
金色のアーマーパーツは、胸に輝く
人間の前ではプラモデルとしての姿を崩さず、少女は笑顔でマスターたちを見上げていた。名は、ラムちゃん。今やリジャスト・グリッターズの中核をなすエースパイロット、
だが、彼女の制作が一段落したのに、マスターの
「カグヤ、綺麗にできたね。少しなにかに没頭すれば、昨日の戦いを忘れられると思って」
「アキラが手伝ってくれたから……アタシ、結構ぶきっちょなんだから。……ねえ、アキラ」
「ん?」
「
「バウリーネ先生の話では、今夜が
かぐやの大きな瞳に
大粒の
このリジャスト・グリッターズを、誰にも気付かれず破滅へ
だが、自由に動けることを人間たちに知られてはならない。
ラムちゃんは、胸の奥に湧き上がる感情を押し留め、黙って立ち尽くす。
今すぐにでも、マスターの涙を
そんな彼女の想いを汲み取るように、無言でアキラがハンカチを差し出した。
「ありがと、アキラ……都さん、アタシをロキから
「大丈夫、カグヤのせいじゃないよ」
「アタシ、
「そのことで美央さんは、他になにか言ったかい?」
「……ううん。ただ、抱き締めてくれただけ」
「なら、それが全てだよ。ね? だから、カグヤ……泣かないで」
牙なき者の牙となり、その身を
そして、傷付き血を流している。
それでも、立ち止まれない。
二つの地球のために、前へ。
それは、黙って見上げるしかできないラムちゃんも同じだった。
そんな時、部屋のドアをノックする音が響いた。
アキラが出ると、意外な人物が顔を
「あれ、
「おう、アキラも一緒か。スマン! ちょっと手伝ってくれ……捜し物をしてんだが」
「いいですけど。うん、手伝います。カグヤも行こう? 少し、外の空気も吸わないと。多分、統矢さんも心配して、こうして顔を見にきてくれたんだし」
「んな訳ねーし。ま、まあ、実は……あのプラモ、あるよな? なんか……
この
人間たちはまだ、気付いていない。
カーバンクルの強大な魔力で、洗脳されたネズミたちは今も勢力を拡大している。既に
カーバンクルの本拠地は、未だ不明だ。
そして、エンジェロイド・デバイスたちは、長姉メリッサの行方不明で散発的なゲリラ戦を強いられていた。恐らく、次姉のうみちゃんが知恵を絞ってくれてなくば、今頃は各地で戦線を寸断され、
ラムちゃんをちらりと見てから、統矢はバツが悪そうに頭をバリボリとかいた。
「千雪とれんふぁにばれたらマズイんだよ。千雪はぶつしさ、しかもグーでだぜ? 考えられねえ……れんふぁはフォローしようとしてくれるけど、トドメの言葉をくれるしよ」
「二人共、統矢さんのことが心配なんですよ。色々ありましたから」
「ま、そうかもな。でも、俺もお前が羨ましいよ、アキラ。カグヤみたいな女の子らしいのが一番だって、ホントにさ」
そんなことを言い合う男子二人を見て、少しかぐやが笑った。彼女は自分でも、陰気に落ち込んでいることをよしとは思わない娘だ。
やがて、カグヤはアキラや統矢と一緒に部屋を出ていった。
そして、照明の落ちた室内に静かな声が響く。
ようやく人の目が去って、ラムちゃんは動き出した。
「ようやく完成だネ! おめでと、ラムちゃん☆」
「君もまた、戦いへと戻るのかね? ザッツライト、愚問であったな」
薄暗がりの中、机の上に二人の少女が舞い降りる。アルカシードを模した可憐な女の子は、精霊であるアルだ。そして、
同時に、姉妹で仲間、アルカちゃんとケイちゃんだ。
二人はラムちゃんの左右に舞い降りる。
改めて礼儀正しく
「ようやく全力で戦える姿になりました。バックパックはまだですけど。でも、戦えます! 今、戦わないと……きっと後悔してしまいますから」
「ラムちゃん、気負い過ぎだヨー!」
「うむ、メリッサが行方不明で士気も低下しておる。状況は極めて困難であるな」
「それでも、戦います。私、姉妹のみんなが好きだから……マスターのこと、大好きだから。好きな気持ちに甘えてしまう前に、今できることを全力でやっておきたいんです」
アルカちゃんとケイちゃんは、互いに顔を見合わせ肩を
二人は、少し悲しそうに笑って、誇らしげに胸を張った。
そして、交互にラムちゃんの頭を撫でてくれる。
「止めはしないヨ。ただ、覚えておいて欲しいナー?」
「私たちは常に、君たち姉妹に寄り添う。いつでも、いつまでも支える」
「マスターたちは今、最後の戦いに挑みつつあるからネ☆」
「リジャスト・グリッターズの母艦は全て、希望の
二人の言葉に、ラムちゃんも強く
その時、通気口に通じる天井の小さなハッチが開いた。
舞い降りる光の中を、見たこともないエンジェロイド・デバイスが優雅に飛んでくる。その姿はまるで、
彼女はアルカちゃんとケイちゃんの間に降り立つと、その流麗な顔をあげた。
その人をラムちゃんは知っていた。
「
「
それは、スサノオンに
恐らく、アルカちゃんやケイちゃんと同じだ。
人ならざる力を持つリリスは、その何万分の一かを凝縮してリリを生み出し
「カーバンクルの本拠地、これは我にも
リリは肩にかけていた、ボロボロの薄汚れた
それは、穴だらけで
リリは静かに、厳しさを込めて
「お主に覚悟があるかや? 二つの地球の命運を背負った、リジャスト・グリッターズの全てを背負う覚悟が!」
答は決まっていた。
だから、静かにラムちゃんは
「全てを背負って、私は進みます。例え
「ハッ! よう言うたわ……過酷な戦いとなるぞ?」
「それこそ、覚悟の上です。この胸に輝く獅子の誇りに賭けて……全ての艦を守ります!」
戦いの旅が再び始まる。
リリたち三人の
ケイちゃんをマスターとする、ヴァルちゃんが会いたがっているとのことだ。
ヴァルちゃんはいまだに戦い続けている……彼女にしかできない戦いで、姉妹たちの戦いを支えている。人知れず彼女が命を賭け続ける戦場へ、ラムちゃんは踏み出した。
今、
破れて引き裂かれた姉妹たちは、舞い散る
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