関連作 漫画『コイシラズ YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS』(作画:定広美香)
2011.07/白泉社 花丸コミックス
<電子書籍> 有
● よくわからない小説からBL漫画への見事な変換
『小説花丸』2010年冬の号~2011年春の号まで連載していた、栗本薫の同人誌、矢代俊一シリーズの一、二作目『YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS』『朝日のように爽やかに』を原作としたBL漫画。
作画の定広美香は、矢代俊一シリーズの商業BL作品『流星のサドル』のイラストを担当したことをきっかけに、晩年の栗本薫と親交をもち、一緒に合同誌を作ったりもしたBL漫画家。もともと栗本薫がファンだったから仕事を依頼したのをきっかけに友達になる、といういつものパターンだ。
ストーリーは「かつて組んでいたピアニスト・結城の死が忘れられずに、一人で演奏し続けていた天才ジャズ奏者・矢代俊一が、若いドラマー・英二と出会い、出会って即股を開いたあとに心を開いていく」という感じのアレです。
今作を最初に一読した感想は「すげえ……」の一言だった。
詳しく書くと「すげえ……あの二段組約300Pの小説三冊かけてJUNEでもないしBLでもないなんかよくわからん薫汁にまみれていたあの同人小説が、ちゃんとしたBLのメソッドに則った漫画になってて、しかも300P一冊に収まっている……」だ。
いやあ、普通、コミカライズって小説よりページ数が三倍以上になるものなのに、三分の一になるなんて本当にすごい。しかも無理にはしょったような感じがほとんどなくて、一冊で一本の物語として綺麗にまとまっている。だらだらと無駄な物思いと「それはいらないです」というエロシーンまみれで矢代俊一が気持ちわるいとしか言いようのない原作よりも、明らかに作品としての完成度がはるかにあがっている。
発表が栗本薫の死の翌年であるところから、おそらく、栗本薫への追悼の意をこめて描かれたのだろう。絵やコマ割りにも手抜きがなく、音楽シーンも原作のようになんか変な笑いが出ることもない。なにより、ちゃんと原作が好きで描いているのだという感じがある。まさかこんなに矢代俊一シリーズが好きな人がいたなんて……と驚愕してしまった。
正直『キャバレー』の続編とは思いたくないし思えないのだが、一作のBL漫画としては十分なクオリティの作品である。
栗本薫の死に様々な人物がコメントを残したが、今作ほどの追悼はほかにないだろう。
ただまあ、それでも原作が原作だから変な笑いが出る感じは残っていますね……乳首に根性焼きとか……あとストーリーのキーになっている死んだピアニストが、腱鞘炎で手首が痛くてたまらないのに矢代俊一のことを思うとオナニーがやめられなかった楽しい変態だったことを思い出したりするとやっぱり変な笑いが出ますね……。
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