関連作『漫画版 パロスの剣』(作画:いがらしゆみこ)

1987.2~5/あすかコミックス(角川書店)全三巻

1991.10/中央公論社(いがらしゆみこコスチューム・プレイ全集4)全一巻

1996.5/中公文庫 全二巻

2007.6~7/フェアベル 全二巻

<電子書籍> 有


 原作・栗本薫、作画・いがらしゆみこのコンビで『ASUKA』誌上で約一年連載されていた少女漫画。全三巻。

 栗本薫自身による同名のノベライズ作品あり。

 

 基本的なストーリー等は小説版と変わらないため、130『パロスの剣』の項を参照してください。

 で、漫画版と小説版の違いについて。

 ストーリーは本当にまったく同じなのだが、古典少女漫画ど真ん中のいがらしゆみこの画風のためか、あるいは台詞が小説版よりくどくないため結果として主人公エルミニアの自称サバサバ系のうざさやミスター当て馬ユリアスのストーカーっぽさが減ったためか、全体から漂うげんなり感が五割減している。いや、漫画版が先なのだから小説家にあたって倍増したと云うべきか。

 特にユリアスはいがらしゆみこが贔屓したのか、小説版とおなじことをしていても心持ち扱いがよく、いいように使われている感が少なくなっている。また、連載漫画らしく定期的な引きのシーンがあるため、終盤までなんか平坦だった小説版に比べるとちゃんと起伏のあるストーリーに見える。

 あまり特筆するような技巧は凝らされていないが、コマ割りにせよネーム配置にせよ読みにくさを感じることはないため、安心してストーリーを追うことができるのはベテランの実力を感じる。

 つまりは、総じて小説版より出来が良い。読むならこちらの方にするべきだろう


 とはいえもともと設定にもキャラにも目新しさや特筆するものがないためそんなに面白い話でもなく、、終わり方は原作以上に唐突に感じられる。どうみてもこれから物語が佳境に入る所で打ち切られたようにしか見えない。というか絶対に前回まで終わらせる気なかっただろこれ。やはり打ち切りなのだろうか。まあ漫画連載だし人気あれば続いていたか……。

 つまり、三巻打ち切りを食らう程度の漫画だと思って間違いない。ただこれはいがらしゆみこのせいではなく、やっぱり薫のほうの問題だなあ。このストーリーでできるだけのことをいがらしゆみこはちゃんとやっていると思う。

 しかし打ち切られたんなら打ち切られたで、薫は予定していた後の展開まで小説でちゃんと書くべきだったとぼくは思うな……いきあたりばったりで後の展開考えていなかった可能性もたかいけど……。


 しかしおんなじストーリーなのに、なんで薫が書いた小説版の男装の麗人はいけすかない自称サバサバ女にしか見えないんだろう……いっそ不思議なくらいだわ……やっぱり作者の性格って作品ににじみ出るのかな……いがらしゆみこもメス丸出しではあるけどオープンタイプで、薫は否定しながらモロ見えってタイプだからかな……。やっぱり自分というものを認めてる人のほうが作品ともつきあいやすいんだな……

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