編集済
去年から栗本薫にはまった者で、うなぎさんのレビューは全集にない作品を買ってみるかどうするか、など参考にさせていただいてます。文章も面白いです。
ただ、うなぎさんはあとがきはあまり重視してらっしゃらないんでしょうか?
全集にはあとがきも割と収録されていますが、翼あるもの上下の文庫版あとがき(昭和60年2月8日)にすでに「さよう、この物語もまた例によって完結していません。当然のことです、森田透も今西良も風間俊介もみんなじっさいに生きているのですから。完結したのは死者の、竜二の人生だけなのです。」とあります。
他にも
「私はしょせん「ミステリー作家」でも「SF作家」でも「時代小説作家」でもないのです。栗本薫は「物語作家」です。これからも、そうやって書いてゆくつもりです。ジャンルの別など、何の障害でもなく、書きたいものを、書きたいように。それが各々のジャンルの偏狭なフリークたちに、そのジャンルを「土足で汚す」ように見えるなら、あいつは馬鹿だと思っておればよい。いつか、必ず、小説はつまらぬジャンルやセクショナリズムを越えるでしょう。私はすべての物語性とそれの生んだ世界とを全身全霊をかけて愛しています。」〔昭和五十九年早川書房ハヤカワ・SF・スペシャル『火星の大統領カーター』あとがき〕栗本薫;中島梓.栗本薫・中島梓傑作電子全集10 [SFII](p.1375).株式会社小学館.Kindle版.
等々、なんならもっと若いころの文章からも折々に「誰が書いても変わらないような文章は書きたくない」「ジャンルを超えた、ナマの人物の人生や物語を書きたい」という意思がみてとれます。
矢代シリーズも読まれたなら、矢代俊一が最初から最後まで「いい音楽はジャンルにこだわらなくてもいい音楽なんだ」「もっと自由に」と度々モノローグで語っているのもわかりますよね。(あと透は俊一と幸せになってますね、一応)あれが栗本さんの小説観そのままで、かつ目指したものだと思いますよ。
ついでに言うと俊一が前と違う事をしようとすると、「変わった」だの「終わった」だの言うファンが何かといる、というのも栗本さんの体験でしょうね^^;
でもそこにとどまらず、実際にある別の世界や誰かの人生を切り取ってきたかのような、生きた血肉の通った、終わらない物語を目指してたんだと思います。
ジャンルや題材らしい文体選びが得意という特技や、古典を山のように読んでいたからかコンサバな土台があるから、あるいはぶっ飛んでいるからか、そういう発想が浮かばないんだと思いますが。そう思って見てみると謎がかなり解けると思います。
どこだったか、電子になっていない紙の本(若いころの本)で自分をドン・キホーテだと言っていて、終始一貫自分の理想の小説を目指していた点ではとても真摯でパワフルな人だったなと思います。
なんだかやたら長くなりました、失礼しました。
作者からの返信
なんというか、私は栗本薫のあとがきは死ぬほど好きだった人間で、当然読めるものはほぼすべて読んでいます。私の文体も栗本薫のあとがきやエッセイの影響がものすごく濃厚です。
で、そこに書いてあることも一度はすべて信じ、栗本薫のすべての作品や考え方を肯定しようとしていたのですが、最終的な結論としてこれらのレビューを書いています。
なので、栗本薫があとがき等で書いていることを信じられているうちは、私のレビューなんて読まないほうがいいんじゃないかな、と思います。特に1995年以降の作品のものは。
私だって無条件に栗本薫を愛していた時期にここにあるようなレビューを見たら「わかってない」と思ったろうし、そう思えている読者の方が幸せだと思います。
編集済
そうなんですよ、このモヤモヤを文面にしている方がいて嬉しいです。
2017年12月の角川文庫で発見してしまって、つい読んでしまったのだけど、そうじゃないよ、なんなんだよ、島津さんおかしいよ、透もなんだよーと散々悶えました。30年も待ったのに。
終わってないよなー、森田透の物語は。亜美ちゃんとわちゃわちゃしながら今西良を待ち、復帰させてもいいんじゃないか。金はあるんだし。そんな2次創作ほしいです。
追記
返信ありがとうございました。
I時間かけて読破、これですよ!
まさに朝日のあたる家のタイトルに相応しい作品です。
これならわかる。泣ける。
職業同人作家栗本薫が到達できなかった成長物語だと思います。
作者からの返信
「うなぎのあたる家」というワードで検索すると出て来るのが、浜名湖うなぎとかいうのが書いたそういう二次創作になりますね……
三体読んでたらAmazonでSF繋がりで栗本薫がピックアップされて、うわー懐かしいなー、そういや朝日があたる家ってどんな話だったけとググってたどりついたレビューでしたが、通勤の電車の中で大爆笑して読んでしまいました。
中高の時にでろでろにハマってた栗本薫、
中島梓名義も含めて(当時既刊のものは)ほぼ全部読んでいたので、うなぎさんレビューに激しく共感。
わかるわかる!栗本さんてそんな人!、って好きな人のいただけないところ笑も共感して笑えるのって幸せです。
久しぶりにまた栗本節に浴したくなりました。
素晴らしいレビューありがとうございました!