384 六月の桜 ―伊集院大介のレクイエム―

07.06/講談社

09.06/講談社文庫


【評】う


● ロリコンものなのにロリ少女がむかつく謎


 クラスでぷちいじめにあっていた小六の桜子は、ある日、近所に住む名物金持ち偏屈じいさんと仲良くなるのだが、思いあまってじじいを押したおしたりしているうちに、いじめが激化したりしたのですが、そんなころ、近所では謎の失踪事件や脅迫事件が起きていて、伊集院大介がうろちょろしていて、犯人はじいさんだったけど自殺したので桜子も後追いしました。おわり。


 あ、ごめ、ちょっ、うっかりあらすじがネタバレになってたけど、でもいいよね。

 それにしてもキモい。本当にもう、キモいとしかいいようがない。クラスメートを素で見下して「いやな世の中よぉ」とか思ってる小学六年生の桜子が、全然小学生に見えなくてまずキモい。いじめられていてもぜんっぜん可哀想な感じがしない。興奮して老人おしたおして「胸にキスして」とか云い出すあたり、本当にもう、このアマは一度死ねばいいのに、と思ってしまうくらいにキモい。ここまで好感のもてない小学生というのも凄い。

 じいさんもじいさんで、本当にただはた迷惑なだけだし、小学生に迫られて体中撫でまわして「純愛純愛」という姿は、実にキモいとしかいいようがない。コミックLOを読んで「YESロリータNOタッチ」の精神を学んでいただきたいものである。

 おそらくは栗本先生自体は「はぐれもの同士の身の寄せ合い」とか「年齢差を越えた愛」みたいなものを書きたかったのかもしれない。が、結果としてキモく発情した小学生がいじめられてキモくうざい老人とからだをまさぐりあうという、本当にもうキモいとしか表現のしようのない話になっている。

 いや、キモいのは栗本先生の昔からの基本といえば基本なんだが、ぼくは昔の栗本先生のキモさは大好きだったんだよ。なのに晩年のはどうしてこんなにも好感がもてない感じにキモいんだろう?


 当然、伊集院大介も末期の常としてやたらと感じが悪く、また推理に関しても「この文を書いた人は「やから」を「輩」、「いつか」を「何時か」と漢字で書いていたので老人。若者はそんな感じは書けない」というように、本当にもう、大介は完全に呆けてしまったんだな、としか云いようのない感じになっている。難しい漢字が書けるから年配の人間と判断するにしても、もう少し難しい漢字にできなかったんですか……。


 いったい、どんな読者にどんな気持ちを呼び起こさせようとして書かれたのか、まったくもって理解に困る作品。百人が読めば百二十人がキモいとしか思わない、そんな作品。

 やっぱ作者的には世間からはずれてしまった者たちに感情移入させるつもりだったのかな? 主人公たちの気持ち悪さやいけすかなさって別に狙ったものではまったくなくて結果的にそうなってしまっただけで結局、作者が普通に気持ち悪くていけすかないいやなやつになってしまったから作品もそうなっただけなのかな。切ない。

 でもこれアレかな、この小学生はいつも通りに薫の自己投影で、この老人は旦那なのかね。じゃあ大介が老人を非難しているのは、旦那への不満の吐露なんですかね? 弱者同士の身の寄せ合いで、若くなにもしらない自分を騙していただけだという。でも大介は大介で今岡くんの投影だからなー。理想の今岡くん対現実の今岡くん? うーん、薫は無意識に書いているものも多いからまったくわからないな……。

 どっちにしろ、この作品はダメだと思いますね。ストーリーがなくてミステリー要素もなくてキモいだけなんだもん……だれが楽しいのさ……楽しみようのなさには限度があるよ……

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