379 大正浪漫伝説 天の陽炎

07.02/角川文庫


【評】う


● 大正レディコミ伝説


 年上の主人のもとに嫁ぎ、貞淑な妻として退屈な毎日を送っていた真珠子のもとに、突如あらわれた野蛮な男、天童壮介。壮介は真珠子の旦那にとりいり、夜中に真珠子のもとにやってきて傍若無人に彼女を犯す。

 天童によってはじめて女の悦びを知る真珠子。しかし天童は真珠子に旦那の金を盗めと脅迫しはじめる――


 えーと、大正ハーレクインロマンスってやつですよね。

 昔、ママンのレディコミでよく見たよ。いい人なんだけど性に淡白な主人と暮らしていたら、チョイ悪な若い男に抱かれてあれよあれよみたいな話。うん、あったあった。つうか九割くらいがそうだった。主婦ってそんなにワイルドな男に襲われたいのかしらん。


 文章は、はじめの方はけっこう真面目に書いていたのだが、話が進むと「イった」「スリル」「チューインガム」など、おまえ大正浪漫する気ねえだろとしかいいようのない単語が頻出しはじめ、栗本先生お願いだから文を読み直してくれという気持ちが高ぶるばかりであった。つうか前作の『狂桜記』ではそれなりにがんばっていたのに力尽きるの早すぎるわよ薫。

 ストーリーの割に無駄に長いのもいつも通りだが、これはいつも通りなのでなにも言わない。


 全体的に『野望の夏』を焼きなおして大正時代にして、ストーリーをずっと薄味にした作品であった。オチは『野望の夏』ではひねってあったのに、これはひねりもくそもないし。

 自分は男なので、レディコミ的なセックスファンタジーにはあんまり付き合う気がしないなー、としか云いようがない。

 でもエロレディコミとしてみたなら、ベタでそれなりに読める話のような気がする。ハードレディコミ好きは読んでみて感想をお伝え下さい。

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