373 浪漫之友 7号(同人誌)
2006.10/天狼プロダクション
<電子書籍> 無
【評】 ―
● 新連載「風と木の一族」
栗本薫個人同人誌第七号。
『狂った月 前編』『ヴァイス・トロピカル 第七回』『副長 第七回』収録
『狂った月 前編』
ある古城に何百年も住む吸血鬼ルドルフ・アルカードとその従者である美少年クリストファ。
あるとき、ルドルフは十日ほど城を空けることになり、面白くないクリストファは召使いの狼男にきつくあたる。だが青白き月が輝くその夜、狼男は理性をうしない、クリストファに襲いかかる――。
『セルロイド・ヒーロー』シリーズが完結したので代わりに掲載されることになった吸血鬼もの。
もとは九六年に上演した舞台『ヴァンパイア・シャッフル』であり、それの派生作品――というか要するに自作の二次パロホモ同人誌である。もう十年も前の舞台だし同人誌だからいいだろうと思って公開したんだけど、別に演じた役者さんを想定して書いたわけじゃないから凸したりしないでね、とナマモノ同人における鉄の掟であるご本尊への密告禁止を促していることから、やはりナマモノ同人なのだろう。
しかし定番といえば定番だが、何百年も生きていろいろな人間と関わるもホモ二人組だけが生き残りみんな死んでいくというこの設定、どう考えても『ポーの一族』である。しかしドSの貴族である攻めと裸族の性悪クソビッチ受けというこのカップリングはエドガーとアランではなくオーギュとジルベールである。タイトルは『風と木の一族』の方が良かったのではあるまいか?
ストーリーは単にジルベールがチンコ要員のブサイク大男にレイプされるだけの話なので、「いつものアレかあ」以外の感想はない。まあ後編になったらストーリーがあるのかもしれないし……(震え声)
『ヴァイス・トロピカル 第七回』
なんか「ウホッ!男同士の乱交祭り」みたいなものに参加することになったティンギだが、例年は大はしゃぎでやりまくっていたのに今年は拾った美少年を裏切るような気がしてそんな気分になれない。だがそれはこの島の住人には存在しない倫理観であり。皆が乱交しろと迫ってくる――
とりあえずデフォで男も女も乱交しまくりで、しかし作者の趣味の都合で男だらけの乱交祭りになっているこの島、大変楽しそうではある。
また、フリーセックスが基本の文化圏で生きてきた人間が一穴主義に目覚めてしまって混乱する、というのは、もしかしたらちゃんと書けば面白いのではなかろうか、と不覚にも思ってしまった。
そろそろクライマックスらしいのだが、しかし終わるのか、これ?
『副長 第七回』
土方は離脱した伊東甲子太郎をだまし討ちし、さらにそれを囮に御陵衛士たちをおびきよせ殲滅させる計画を立てる。
だが新撰組古参組であった藤堂平助をも殺した土方の執念は、永倉や原田ら古参隊士たちとの間に亀裂を生じさせる――
いわゆる油小路事件の顛末である。
過剰に長い物思いやキモエロシーンもなく、普通に新撰組ものらしい、史実に沿った話のため、普通に面白い回だった。そもそも幕末のこの辺の動乱は普通に面白い。
油小路事件の描写もなかなか凄惨で、島田魁の一人称が良い感じに効いている。裏切った藤堂をそれでも逃がそうとする永倉と、土方の言うことを無条件で実行する島田の対比が切ない。
『夢幻戦記』ここまでたどり着かなかったからなあ……。ここで裏切る藤堂を掘りさげる伏線はやたらとたくさん張ってたのに……。
『ポーの一族の詩』はぶっちゃけただのいつものレイプものなので面白くないが、残りの二本はストーリーが山場に入ってきた感じがして良くなってきた。やはりストーリーは進んだほうがいいんだよ!(一日ぶり二度目)
巻末の広告に読者からの感想が載らなくなってしまったのだが、やはりあれは逆に寂しくなると気づいたのだろうか? 気づかないで欲しかった。痛々しいネイキッドな薫でいてほしかったよ……。いや、感想募集したり広告作ったりしてるの編集してるマネージャーで薫は関知してなかったかのかもしれないけど……。
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