333 グイン・サーガ外伝19 初恋
2004.05/ハヤカワ文庫
<電子書籍> 有
【評】う
● 死してなお評判を下げる稀有なナリス様
アルド・ナリス19歳は宮廷デビューを飾りブイブイいわせていましたが、セフレに煽られ処女をやり捨てしたところ、惚れられた挙句自殺され、なぜか被害者ヅラしました。おしまい
身も蓋もないあらすじだが本当にそれだけの内容なので困る。
基本的に「恋とはなんだ?」というナリスの長いけど浅いうえに全然世界観と合っていない現代的な問答と、パロ宮廷舞踏会のくどい描写にページ数のほとんどが費やされており、「ナリス様、性格と頭悪そうだな……」という印象ばかりが募る。
基本的に栗本薫は「受けが恋知らず」という設定が好きで、今西良にせよ矢代俊一にせよ、栗本薫のメアリー・スーとなったホモキャラはみんな恋を知らないキャラになってしまい、その恋知らずが攻め様によって初めて恋を知る、というパターンにしたがる。それ自体は別に良いのだが、なんか知らんが「でも童貞はいや」という謎の性癖があり、受けはモブビッチ相手に童貞を捨てていることが多い。多分、ホモではなくてあの男だから良いのだ、という設定のためなのだろうが、本当にモブ女が相手で、かつ誘われてやっちゃうパターンが多いため、棚ぼたックスしときながら責任逃れしているクソ男感が半端ない。その中ではナリスのお相手のデビ・フェリシアは、かつて父と叔父が争って女であり、その情夫となることで自尊心を満たすという設定上の理由がちゃんとしているだけ、ずいぶんとまともではあるが。
まあ、その謎の童貞捨ての儀式も良いとして、問題は次の相手が決まった時に、これまでどんなに恋人といちゃいちゃしていようが「いま思えばあれは恋ではなかった」という、地面に落としても三秒以内ならセーフみたいな屁理屈を毎回こねることだ。お前は素人物のAV(素人とは云っていない)によく出てくる「ほぼ処女」「実質処女」の女優かよ。
しかしこれが本当に感じが悪い。『朝日のあたる家』で明らかに受け同士なのに透×良の無理なカップリングのいちゃつき話をした挙句、『ムーン・リヴァー』で薫がやっぱり透には島津さんだと思い直して「良はノンケだからあれは気の迷い」とか云い出した時は作者も透もぶん殴りたくなったものだ。
この『初恋』という外伝の役割も、基本的には同じだ。これまでの本編および外伝の描写を見る限り、ナリスは得られなかった母の愛の面影をおって近づいたデビ・フェリシアに初恋をし、妹のように思っていたリンダをいつしか愛していたという設定のはずだ。(まあリンダへの愛は展開のために強引にそうなった感が強いが)
しかしある時期を境にナリスがお姫様化し、お相手がヴァレリウスということに決まってしまったので、それまでの恋愛沙汰はすべてノーカンでヴァレリウス相手に初めて恋を知ったという設定になることが決定した。その過去改変のために丸々一冊つかったのが今作だ。思い詰めて自殺しようが己のために身を捨てようがそんなの知らないよノーカンノーカンというわけである。感じ悪いったらない。
無論、単品の話としても展開が遅いし、事件がほとんど起こらないし、ご都合主義な展開で、人間関係の動きも薄っぺらく、大事なことが独りよがりの会話ですべて終わってしまうため、面白くない。
それでも本編前半時期に書かれた外伝であれば、この面倒くさい人格をした性悪クソビッチのナリスは果たして愛を知ることがあるのだろうか、そのことがパロの運命を動かすのだろうか、という先の展開を予測して楽しむ一助には成り得ただろうが、とっくの昔にナリスが死んでる状態で、しかも本編でも同人誌でも散々うんざりするようなホモップルぶりを見せつけた後だったのでなにもワクワクする要素がなく、作者が過去改変して自己満足する以外の役に立たない。
それにしてもこのナリス、本当に感じが悪い。そもそも大公で文官と武官の長で第二王位継承者で将来の摂政と目されているという限りなく最高権力者に近い状態で、田舎の地方領主の娘に「抱いてやるから来いヨ」って、完全なパワハラなのに自覚症状ゼロで(みんなぼくの外見だけで判断しているのだ)みたいなことばっかり考えてて、使えねえボンボン感丸出しだし。女にも男にも自分から手を出しておいて被害者意識丸出しだし、本当になんなのこいつ。ホント、さっさと死んでどうぞ。……あ、死んでたんだっけ……?
そんな感じで、死んでなお評判を下げるナリス様の類まれぶりを満喫できる一冊でした。
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