329 夢幻戦記 13 総司紅蓮城(上)

2003.12/ハルキ・ノベルス

<電子書籍> 無

【評】 う


● 盛り上がることなく芹沢終了のお知らせ


 会津藩は壬生浪士組に「新撰組」の名を与え、近藤に芹沢除外を示唆する。藩命という大義を得、ついに土方は芹沢暗殺に動き出す――



 前巻での一触即発の状態から、特に盛り上がることなく新撰組という名称になり、特に盛り上がることなく新見錦を切腹させ、特に盛り上がることなく芹沢を暗殺する巻。

 13巻もかけてようやく芹沢暗殺に到達するという悪夢のようにたらたらとした展開の遅さはもとより、ここまでじっくりと描いてきたのに肝心の暗殺シーンがまったく盛り上がらず、とりついていたクラヴェロス(蛙の妖怪だったはずがいつの間にかまたイドの色違いになっていた化け物)が出て来ることもなく、本当にあっさり終了。


 新見錦が自分なりに壬生浪士組のために尽力し、それなりの人望もあったということが語られたのは、脇役をモブではなく人間として描いているところが見えるのだが、これまでの巻でそういうシーンが一切なかったのがもったいない。巻をまたいで敵役なりの考えや生き様を描いていれば、小人物なりの魅力や人情が出るのに、唐突に死ぬ前にやられても長編作品ならではの感慨というものが出ない。つうか初期のグインではカースロン隊長で中間管理職の悲哀をじっくり描いていたのに、なぜ夢幻戦記ではおなじような物思いにばかりページを割いて脇役を活かそうとしないのか……。


 新撰組最初の見せ場である芹沢暗殺がものすごくあっさり終わってしまい、展開の遅さに耐えてついてきたのにこれかよ感がすごい。しかもここからの展開を考えていなかったのか、次の巻の刊行まで二年が空いている。

 ただでさえ展開が遅いのに二年も空いてしまったので熱が冷めきった自分はここで読むのを止めてしまった。一つの区切りとなる芹沢暗殺が盛り上がっていれば続きが気になって読んでいたろうけどね……このガッカリ感ではね……。

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