319 指

03.01/角川ホラー文庫


【評】う


● これぞホラーの最底辺


 小学生の男の子が林間学校にいったらそこかしこに指が落ちてました。こわーい。という長編ホラー。


 小学生の男の子が林間学校にいったらそこかしこに指が落ちてました。こわーい。という長編ホラー。

 本当にもう、あっちこっちに指が落ちてたよってだけで、話に面白みはまったくない。起承転結なんてまるでなく、ただ指落ちてたビックリの繰りかえしで頁が埋まっていくだけ。

 そしてなによりも主人公がうざい。小学生高学年はこんなに幼くないです。ぶりっ子しすぎてて気持ち悪いです。本当にもう勘弁してください。とにかくイライラします。晩年の栗本先生って定期的に少年を書いて、それが全部が全部幼すぎて気持ち悪いんですけど、これはなんなんですか? 息子の大介くんがこうだったのですか? それとも大介くんのすごい幼いころのイメージでとまってしまっているのですか? いやまあ、実際、世の母親たちは子供のイメージが幼いころのままで止まっている人がけっこういる感じではありますけど……

 それにしてもなんなんだろう、この気持ち悪さは、自分が男だからだろうか? 子供をいつまでも幼児としてあつかいたい母親のからみつくような負の愛情を感じてしまうからだろうか? ちょっと自分でも理解しがたいくらいに、晩年の栗本薫の少年描写には拒絶反応が出てしまう。

 その気持ち悪さは置いておいても、肝心の指の気持ち悪さの描写は物足りず、なんで指なのか、どうして指じゃなくちゃいけないのか、ストーリー的にも描写的にもまったく必然が感じられず、とりあえず書き出してみたけどアイデアが発展しなかったからおなじような内容を一冊丸々繰り返しているようにしか見えない。


 ひどい作品が続く栗本ホラーの中でも、底辺を極めた一作と云える。栗本薫という枠をとっぱらっても、いままで読んだホラー小説の中でも最底辺にあると断言できる。

 角川ホラー文庫での仕事はこれが最後となっている。やはりつまらなさすぎたのだろうか? それとも「なにハルキ・ホラー文庫で似たようなもの書いてんだよ」と気づかれてしまったのだろうか? 

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