271 タナトス・ゲーム ―伊集院大介の世紀末―

99.07/講談社

02.07/講談社文庫


【評】うな


● 正々堂々とした焼き直し


 自分を題材にしたホモ同人誌が出版されてることを知った大介は仰天しながらも興味津々にやおい業界について勉強したりしながら、ある女性漫画家殺人事件を解明するのでした。



 転換点はこの辺かしらね。なにがっていうと、アトムくんがなんとなくアレな子になってしまったのは。

 いや、正確な転換点は『通信教育講座』(後述する栗本薫本人による同人誌)なんだけどさ、それを読んでいなくてもなんとなくこの辺から「アトムくん、うざくない? 助手のくせにちょっと伊集院さんに冷たくない?」と思うようになりましたね。まだなんとなくの段階ですけど。あと晶もずいぶんとどうでもいいキャラに成り下がってしまいましたね、この辺で。

 ま、そんなキャラ個別については置いておくとして、だ。


 この作品自体は、実はけっこう好きです。やおい少女たちのあり方への認識が古いとか、ちょっとメンヘラ多すぎとか、『ぼくらの気持』の焼き直しかよ、とかそういうのはあるんですけど、こういう題材で、こういうホワイダニットを書けるのは、いかにも栗本薫的で、わりと良い感じです。

 ただ、なんつうんですかね、なまじ自分も同人に足突っ込んだから書いたんでしょうけど、九十年代後半以降の肥大化した同人市場に対しては、ちょいと理解が足りないというか……要するに古い、んだな、同人作家や購読者に対する認識が。

 それを、ま、しゃあないと目をつぶれば、けっこう面白い題材とオチの作品なので、けっこう読めます。他に書く人があんまりいなさそうなモチーフだしね。

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