259 レクイエム・イン・ブルー 4 紅の終章

98.09/角川ルビー文庫


【評】う


● そしてまた紙上公演がはじまってしまった……


 ユキをかけた舞台の幕があける。果たして二人は龍に勝つことが出来るのか……


 四巻ではいよいよ栗本先生の大好きな舞台の紙上公演がはじまり、『新・天狼星』のときと同様に「この舞台つまらなそう……」と身悶えすることになります。

 舞台の上で普段の自分とはまったくちがう役になりきってる主人公の独白の数々の恥ずかしさときたら、『新・天狼星』と比べてもなお凶悪すぎて正視にたえない。中学生の黒歴史ノートをじっくり見させられているようないたたまれなさがたまらない。本当に心からたまらない。

 そして舞台が終わって、龍さんとの対決がどうなったかというと、ヤクザが「いやあ、あんなに舞台上でいちゃつかれたら、認めざるを得ないけど、チンコたっちゃったのでなおさら手放せないですねえ」とか云ってたら、脇役に刺されて、それを見ていた主人公が「おお、なんという――」と勝手に悦に入り、龍さんが死んだのか、三人の関係はどうなるのか、まったく完全になんの解決も見せぬままにとりあえず終わりということになり、あまりの投げっぱなしっぷりに「え、なんなの……」と素直に呆然としてしまう結末を迎える。本当にこれ、なんなんだろう……やっぱり栗本先生が紙上公演したかったのと、最近おぼえた極悪ヤクザ調教をやってみたかっただけだろうか?


 しかし他のJUNE物に比べると、現代的なBLに挑戦している感はあり、自己撞着のマンネリ感は薄く、その挑戦心は評価してもいいのかもしれない。もっとも、『終わりのないラブソング』で看板の一つとしてルビー文庫草創期を牽引した、むしろスニーカー文庫でのおわらぶのヒットがルビー文庫の創設の大きな一因となったと思われるのにも関わらず、今作を最後に栗本薫がルビー文庫で新作を出すことはなく、わずかに『朝日のあたる家』の文庫化があるばかりであるところをみると、この挑戦が成功したとはとても云えないのだろうなあ……。

 まあ、率直な感想を一言で云うと「受も攻もヤクザもキモいだけで萌えねえ……」に尽きるし、それはBLとしては致命的ですよね……。BLは素敵じゃなきゃダメですもんね……栗本先生、非モテが過ぎてセックスが絡むとみんな気持ち悪くなるんだもんなあ……BL向かないよなあ……

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