248 グイン・サーガ外伝13 鬼面の塔


1998.03/ハヤカワ文庫

<電子書籍> 有


【評】うな


● 鬼面の塔(塔が舞台の話とは云っていない)


 さかしまの塔よりマリウスを救出したグインは、シルヴィアがいるという鬼面の塔に向かう。


 展開おそっ!

 どれくらい遅いかと云うと、あなた、この『鬼面の塔』というタイトルからして「ああ、今度は鬼面の塔の中で戦うんだな」って思うじゃないですか? 入るところで終わりますからね。おそっ!

 じゃあなにをしているかというと、最初の章は救出されたマリウスが延々と喋っていて、ずっと喋っているからなにか大事なこといっているのかなと思うと、内容は「シルヴィアは鬼面の塔にいるよ」程度しかない。それ、前巻でグラチウスが云ってたから知ってるYO!

 その後、暗殺教団と遭遇して戦うのはまあいいとして、次は唐突にかつてグインがランドックで身につけていたというハイパーアイテムのユーライカの瑠璃が手に入るのだが、チートアイテムのくせに本当に唐突に手に入るので困る。まあ海外ファンタジーではわりとよくある話だし、グインがチートアイテムを唐突に拾うインチキスキル持ちなのは初期に唐突に変なもの拾ってラゴンの王になったときからわかっていたことですけどね……『トワイライト・サーガ』もたいがい唐突にアイテム拾ってたしね……。でも、ぼく、本当は強力なアイテムはもうちょっとちゃんとした流れで手に入れるべきだと思うんだ……ゲーム脳だからそう思うんだ……薫はゲームをやらないからわかってくれないのだね……。


 そしてその後はグラチウス先生が竜王ヤンダル・ゾックがどれだけヤバイかということを長々と講義してくれる。この説明とグインのリアクションで、どうやら本編最後の敵はヤンダル・ゾックっぽいことがわかる。いや、実際にどういうつもりだったのかは永遠にわからないけど、書き方的に明らかにラスボスである。かつて自分が書いた改変プロット『うなグイン・サーガ』の流れは、だいたいこの時の話から想像されたものである。

 そういう意味ではグイン・サーガ全体に関わる大事な巻とも云えるし、面白いと云えば面白い。

 が、このお話が長すぎて終わってすぐに「あ、タイトル通り鬼面の塔に入らなきゃ」という感じで塔に入って終わってしまう。展開マジで遅い。もはや外伝というより本編の説明であって、単品としての面白さをどうこうできるものではない。

 なので「展開の遅い説明回でした」以外に云えることがなく、いよいよ長編シリーズを一冊ずつレビューすることの無意味さを感じつつあるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る