222 あなたとワルツを踊りたい
1996.10/早川書房
2000.04/ハヤカワ文庫
【評】う
● タイトルだけは名作の匂い
普通のOLがストーカーに狙われて大変ですよ。以上。
これ、一冊もかけてやる話か? というのがまず第一印象。
肝心のストーカー心理の描き方が良くない。これも化け物みたいな感じで、共感も出来なければ恐ろしくもない。なにがしたいのかわからない。
まあ、話が薄いだのページ数が無駄に多いだのは冷静に考えれば初期の作品からそうなのだが、元来、栗本薫という作家は文章からにじみ出る情念で、わけもなく読者を共感の渦にひきずりこむという荒業、神通力をもって読ませていたわけで、今作も文章の力が健在ならばけっこう面白かったかもしれないが、なにぶんこの時期にはけっこうアレがそれしちゃってて、ストーリーの粗がもろに読者に感じ取れちゃうのです。
うーん、ストーカーと栗本薫って相性抜群というか、もう普段からストーカーが出てくる話ばっかり書いているのに、なんでいざストーカーを題材にした話書いたらこんなんなっちゃたんでしょうね。被害者の視点で書いてしまったからいけないんでしょうかね。ストーカー本人の視点でねちっこく書けば、栗本先生にかなう人間なんてあんまりいないのに。生粋のストーカー体質だものね。
あ、でもアレかな。自分がストーカー体質だって自覚症状がなかったのかな? あの気持ち悪い独白とか思いこみに満ちて相手の感情おかまいなしな長台詞とか、普遍的な人間の心理を描いていたつもりだったのかな? 作中であんまりドン引きされてないものね。薫が苦手な読者の大半はあのストーカーっぷりにドン引いて読まなくなるんですけどね。ぼくみたいなネイキッドストーカーはあれに惹かれてファンになるんですけどね。
だからストーカーの恐怖を書こうとか思わずに、想いが通じない純愛の悲しさを描いた作品を書いて、それをストーカー小説として売り出すのが正解だったんだろうね。これはバカ売れするでえ。
あ、この作品、タイトルは好きです。ストーカーものでこのタイトルっていうの、うまいと思いました。
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