221 終りのないラブソング Tomorrow
1996.10/角川ルビー文庫
【評】う
● 読者のTOMORROWはみえないよ……
本編最終回から一年後、二葉くんはあいかわらずニートしてるけど、無趣味なのでヒマです。友達もいないので本当にヒマです。なんか近所のキモヲタにもストーキングされてうんざりです。
そしたら隣に画家が引っ越してきたので友達になりました。ちなみに画家のキャラは伊集院大介ともろかぶりしまくっていて、大介が変装しているんじゃないかと疑うほどですが、別人でした。(まあ、大介っつうか、要するに旦那の今岡清くんなんだろうけど)
友達もできて二葉くんはハッピーハッピー。夜の生活も充実してるし、これは「もう昔の友達にのろけるしか!」と奈々やゲイバーのママに電話して「よし、パーティーだ!」ということに。
浮かれて部屋に戻ったらキモヲタにレイプされそうになったけど、なんか大介もどきと竜一が助けに来てくれた無事でした。
そんなわけでパーティーをしたらなんか清正はアル中になっていたけど、なんかまあ、これでいいんじゃないかな、ということになった。
……いや、さ……『エターナル』よりは、まだマシかもしれないけどさ……一冊丸々かけてわざわざやる内容か? こんなの五十枚で仕上げろよ、五十枚で。そんで『エターナル』なくしてこれを最終巻に収録しろよ。
文章、展開、キャラ、すべてがいいかげんで引き伸ばしに満ちてて、後年の栗本薫の悪いところが実に完璧に出ている。本当にもう、どうしようもない一作。いちおうパーティーして大団円っぽくしている分、終わりっぽくはなったけど、そこでもなぜか清正がアル中になっているという意味のわからない嫌がらせ設定つけたしてスッキリさせてくれないしさ。
結局、全巻通して読んでわかったことは「考えなしに連載しちゃダメ」ということだった。せめて「これをしたらクライマックス」という指標が一つあればちがったんだろうけどさ。というかてっきり三巻くらいからは「竜一との再会」がそういう指標なのかと思ってたら、適当なところで再会してぐだぐだになるし。なんであそこで再会させたんだろうか……なにも思いつかなくなったからだろうかエロシーンを書きたくなったからだろうか……
村瀬二葉という可哀相な捨てられた魂の彷徨を気にしていたら、だんだん可哀相ではなくただのニートになってどうでもよくなってくるし、あんなにも心を捉えていたキャラがこんなにもどうでも良くなるなんて、栗本先生の作品にはいつもビックリさせられる。
初期はまさにJUNEの王道というべき、社会からはみでた者の魂の叫びと捨てられた子供の魂の彷徨の話で、文体や書き方に賛否こそあるだろうが、むしろその恥ずかしさも含めてJUNEを代表する一作と云っていい名作であったと思う。
が、竜一と再会して以降は、ただ連載されていただけの、初期のことさえどうでもよくなるほど救いようのない駄作になっている。時期がちょうどまた栗本薫の文章がまさに激しく劣化しつづけている時期であったため、グインと同じほどに、あるいはそれ以上に日々ひどくなっていくのを実感できてしまう悲しい作品。
やはりキリのいい二巻で完結したと思いこむのが、一番無難、というかそれしかありえない作品だと思うわけです。
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