170 里見八犬伝


1993.08/講談社

2001.12/講談社 シリーズ古典

2010.03/講談社 21世紀版・少年少女古典文学館


【評】うな



● 普通の翻訳


 古典名作を有名作家が現代語訳するというシリーズの一作。

 滝沢馬琴の同名作を栗本薫が担当。


『里見八犬伝』といえば選ばれた八人の勇士がお国再興のために戦う姿を30年弱もだらだらと描きつづけた小説。薫がこの企画に馬琴を選んだのは、そんな元祖ラノベ的なところにシンパシーを感じたからであろう。


 さておき、内容は普通に里見八犬伝である。

 少年少女向けのため、わかりやすい言葉で、長い原作を大胆にはしょって書いている。企画が企画であるために、文章に栗本薫的な癖はかなり控えめになっており、率直に云って薫である必要をまるで感じない仕事である。

 作品として見ても、原作がクソ長いために尺が足りずに前半部分で終了し、以下はあらすじで終わっているため、里見八犬伝を知りたくて読むには中途半端な本と云わざるを得ない。


 もっとも、この作家による現代語訳シリーズは教育用であるため仕事としては手堅く、他の作家のものも含め定期的に再刊されているので、もしかしたら結果的に最後まで書店に残る栗本薫作品となるのかもしれない……。

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