161 魔界水滸伝外伝 白銀の神話 運命の巻

1992.10/カドカワノベルズ

1995.06/角川文庫

<電子書籍> 無

【評】 うな


● 反応に困る


 いろいろあって多一郎は蘭丸とハメました。そろそろ本能寺です。続く。



 なんかすごく反応に困る巻だった。

 前巻に比べると史実垂れ流し感が減り、このシチュパロ同人の本筋である蘭丸との恋愛描写やセックスシーンもあって良くはなっているものの、じゃあ面白いのかというとそんなこともなく、かといってひどいのかというとそんなことはなくも、退屈というほどでもないから盛り上がらないなりにつらつらと最後まで読め、でも読み終わった感想はやっぱり面白くはないという……なんというか、普通に力のない作品である。

 唯一、インスマウス人あがりでありながら自覚がなく、順調に本能寺のフラグを立て続けてしまう明智光秀の姿は滑稽さと悲哀とがあって良いが、その光秀を「生まれが悪いからなにしてもダメ」みたいに全否定しているのは、登場人物である多一郎が、というより作者の理不尽な選民思想が鼻についてしまって、素直に褒められない。

 まあ、今作の作品としての売りはホモなんだから、そこさえできていればいいのだろうけど、ぼくには蘭丸=涼の魅力がいまいちわからないもので……。ていうか涼も多一郎も薫の分身同士にしか見えないからちょっと辛いのよね……。まかすこ第一部のころは別にまんざらでもなかったんだけど……。


 全体的にこのシリーズ、押しカプを信長・蘭丸に置き換えて萌えシチュを垂れ流したいだけの作品なのに、中途半端に資料を調べて面白く噛み砕いてもいない史実垂れ流すせいで、歴史ものとしては掘り下げが浅く新しさもないので微妙、ホモ同人としてはいらない信長の半生がだらだらと説明されて微妙、とどっちの観点で見ても物足りないんですよね……。

 あとがきで歴史考証とかこだわらないでと一巻からずっと云ってるけど、その辺の肝の据わってなさが作品にも出てしまっている感じね。

 でもまあ、マニアに対する「うるさくしないで」っていう薫の予防線は、やたらと注意書きをつけるいまのネットの腐絵師みたいで、やっぱり薫は面倒くさいオタクメンタルの先駆者なのだなって感心するね。タグつけしたら「※ヤオイ要素アリ」「※R-18」「※オリキャラ注意」「※歴史考証非推奨」「※毒舌注意」みたいな感じかしらね……。


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