139 魔界水滸伝 19
1990.11/カドカワノベルス
1993.04/角川文庫
2004.02/ハルキ・ホラー文庫
2017.01/小学館P+D BOOKS
<電子書籍> 有
【評】 う
● 唐突な駄作化
役行者の次元内で目覚めた相模忍に知らされたのは、魔界の崩壊と人間界が次元の彼方へ漂流してしまったことだった。
一方そのころ、目覚めた雄介の前にクトゥルーがあらわれ、次元侵略をやめるから話を聞いてくれと言い始める――
「まかすこは二部がな~」と長年思いながら、今回の再読に踏み切ったわけだが、確かに第一部ほど面白くはないし、いちいち肩透かしはしてくるものの、そこまでひどくも思えなくて「あれ?」という気持ちになっていた。好きか嫌いかで云えば好きって云えるよな~、と。
ホモ展開も、後のグイン・サーガで慣れてしまったためか、この程度だったら別にそんなに……という気にすらなっていた。ホモセックスシーンがあるわけじゃないしね。
やっぱり読んだのが九十年代後半だったから、八十年代臭が過剰にダサくみえてただけなのかなあ……
が、そんなことはなかった。
この終盤にきて唐突に、はっきりとこの巻はつまらない。
17巻の終盤で黒い太陽となった雄介が白い太陽となった多一郎と激突する!というカタルシスを期待させる展開から、18巻で「外伝かよ」と云いたくなるような壮大な横道。それでようやく戻ってきたと思ったら、もう多一郎との戦いは終わっていて、クトゥルーさんが「もう戦いは勘弁勘弁」って何十ページにも渡って井戸端会議レベルの口調でだらだらと事の顛末を説明してくるのが、もう「おい、ちゃんと対決書けよ!」とキレそうになったね。
クトゥルーはクトゥルーで「お前らのせいで仲間のハストゥールやラン・テゴス乗せたまま地球がどっかいっちゃったから戦うのやめてみんなで地球探そう」とか云いだして、この壮絶な腰砕け感はなんなのか。本格的に戦った後の休戦ならともかく、18巻もかけてなにひとつ激突することなく降参するクトゥルーなんなの……全然妖怪大戦争じゃないじゃん……出会い頭のワンパンでニャル様が死んだだけじゃん……。
その後、クトゥルーたちの全然宇宙的恐怖を感じない生態が長々と説明されて、どんどんと腰砕けになり、一方で雄介はほとんど戦っていないのにすでにクトゥルーよりも強くなっているみたいで納得いかないし、いきなりみんな宇宙や並行次元をびゅんびゅん飛び回るようになったのはスケールアップしすぎて実感がまるでなく、かなりちゃちい。フラッシュマン全然笑えないよこのちゃちさ……。
雄介は多一郎と再会してだらだらと会話して、同じようにだらだらと会話しながら適当にほっつき歩いていた竜二と風太が暗黒星ユゴスにたどりついて、クトゥルーに「ちょっとうちらの聖地でごたごたしてるのいるんですけど」って呼ばれた雄介たちもユゴスにいって再会。
「地球行方不明だしクトゥルーとの戦いもなあなあで終わってるしなんか収拾つかなくなってきたけどどうする?」とみんなで話し合っていたら、唐突に多一郎がユゴスのゼリー状の海を見て「あ、これ涼じゃん」と云いだして、みんなも「え、うそ。あ、ホントだ涼だ」って納得して、多一郎がゼリー海と見つめ合って、第二部最終巻へ続く!
まて、なにが涼だ。強引に納得させようとしても全然意味分からないから。
なんかもう、とにかくなんか唐突にどうでも良い感じがすごい。ここまで唐突にどうでも良い感じになるなんて驚いたよ……。
クトゥルーとの戦いという設定で、やるべきイベントをぬるりぬるりとスルーしてきた結果、完全に収拾がつかなくなって作者もキャラも途方に暮れているようにしか見えないよ……。クトゥルーの神々十二神とかいってタコ様ばっかり出てくるし……。
それでどうしようもなくなったから「一体どうすれば……」と悩んでいるときに「あ、ホモだ!ホモで盛り上げればいいんだ!」と思いついてしまったようにしか見えない。思いつくな。
ちくしょ~なんだよこの話……ここから普通につまんねえよ……急展開するにしてもちゃんとカタルシスをくれよ……戦いとか終わったことにして事後説明にするなよ……なんでリアルタイム描写しないんだよ……この後もちょくちょく薫はこれやるけど、逃げだろこれ……絶対に許さないかんな……!
ちくしょ~竜二は八大竜王の筆頭になってしよ~第一部ではずっと海竜王が海のボスだったじゃん……第一部ラストの書に記されてた竜王は十もいたじゃん……竜二は別で記載されてたじゃん……なんだよ八大竜王筆頭の西海竜王って……四海竜王なのか天竜八部衆なのかはっきりしろよ……。
次元の狭間をさまよっていたウシマツの死体は意外にもちゃんと回収されていたけど、なにも秘密なんかもってなかったしよ~。ちくしょ~お前~さてはアレだな~九十年代に入ったから売上下がって「そろそろ辞めようか」とか云われたんか~? そうでなければこの唐突な打ち切り展開納得いかねえよ~。
まあいいや……泣いても笑っても第二部は次で最終巻。これまでの感想のまとめもそこでやろう……しかしなあ……ここまで一気につまらなくなるかなあ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます