118 魔界水滸伝 14
1988.06/カドカワノベルス
1992.01/角川文庫
2003.04/ハルキ・ホラー文庫
2016.08/小学館P+D BOOKS
<電子書籍> 有
【評】 うな∈(゚◎゚)∋
● 地球軍とは一体なんだったのか……
月面基地の破壊に成功するも、その衝撃に意識を失った多一郎はクトゥルーに囚われてしまった。一方そのころ、洋上のアークでは元安西軍団であった第四コマンド軍団がクーデターを知り、鎮圧のために動き出す――
冒頭からいきなり十数ページも多一郎と涼が浜辺でアハハウフフするシーンが続き「ダメだこのホモ小説……早くなんとかしないと……」という気分にさせられる。たーさん、あなたわりと死ぬちょっと前まで(もう足手まといだから殺しておこうかな)とかやってたじゃん……ふられてから執着しはじめ元カノにラブソングの歌詞をメールするロミオさんかよ……。
まあこれはクトゥルーの見せている幻影なんですが、現実のホモシーンじゃなくて一安心するべきなのか、これがたーさんの理想の光景であることに愕然とするべきなのかは難しいところですね……。
そして多一郎とクトゥルーの対話シーン。
タコ様がやっぱり意外と普通に話せるおじさんであることが発覚してしまい、「え、ラスボスと思われていたキャラがこれでいいの?」感がにじみはじめる。やたらと言質をとろうと幻影を見せまくるシーンはこの後、グイン・サーガでもありとあらゆる場面で繰り返される光景である。
しかし、一応、まかすこでもタコ様たちは旧神に負けて封印されていた設定なんだな。第一部のラストで百八星を記したものを送ってきたのが何者かもしれないままだし、第三部か第四部では、この旧神と呼ばれる上位存在が物語のキーになっていく予定だったのかな……。
中盤はアーク艦内で、元部団連合の面々がクーデター部隊と戦うくだり。
近代兵器の軍隊を脳筋軍団が蹴散らしていくこのくだりは面白い。この怪物じみた軍団が暴れるシーンはハズレがないのだ。その最中に、前巻で死んだ半田草太郎の親友、高隆が後を追うように0コマ死するなど、さりげなくホモ好きへのサービスがなされている。こういうさりげないのでいいんだよ、こういうので。たしかこの当時のグインのあとがきのバレンタインチョコ集計で、追悼として半田&高あてのチョコも届いていたんだよね。
ついでにアレックス・カミンスキー艦長も流れ弾にあたって適当に死ぬ。お前は二巻の頃から登場して、当時の雄介に命がけでやらなければ勝てないとすら思わせたキャラなのに、なにもせずに死ぬんかい。
この辺の、死ぬときはあっさりと死ぬ、という栗本薫の脇役の扱い方は決して嫌いではないしむしろ好ましく思うところも多いのだが、カミンスキーさんはさすがにあれだけ出番もらってこれまでの経歴説明しておきながら、ほぼなにもせずに死亡はいかがなものですかね……もうちょっとなにかするべきではなかったですかね……。
クーデターは鎮圧したものの、地球軍のクルーは半減以下という壊滅状態。で、結局この巻で解散。
待って……11巻までかけた結集した主人公の軍隊が一瞬で解散ってむなしすぎない……? いや、本格的な戦いを前にクーデターで消滅というむなしさ自体はきらいじゃないんだけど、そのクーデターの人たちがみんなモブ扱いで戦闘もすぐ終わっちゃったしさ……ここで地球軍が終了ならクーデターにもっと苦戦してよ……。
それに内部分裂で消滅という虚しさを作中でも語っているけど、それならクーデター部隊がサイコ・コントロールされてたって設定いらないじゃん……人間同士の愚かな争いってところを強調してよ……ていうかこれコントロールされてなかっただろ……薫はどっちにしたいんだよ……。
そもそもこんなにあっさり解散するなら、11、12巻で結構なページ数をかけて地球軍の部隊編成とか紹介したのなんなのさ……完全に無駄じゃん……加賀先生も「これから先の戦いには人間の兵器はいらん」とかじゃないよ……だったらはじめからアークと合流するなよ……なに雄介も地球軍解散でホッとしてんだよ……。
戦闘シーン自体は面白かったし、加賀四郎が風太を説得するところなどは「よかった……先生はボケてしまったわけじゃないんだ……」と安心できたし、カミンスキーさんが死ぬところも悪くなかったんだけど、どうもこの地球軍即解散という展開自体がガッカリというか、第一部終盤の「ついに禍津神の軍勢が揃った!」というワクワク感がへにょへにょになってしまった感じでさあ……。
これは確かに予想外の展開ではあるけど、悪い意味での予想外ですよ……。もうちょっと戦って人員が減っていって「もうここからは人間は無理だ」ってアークを捨てる展開にしてほしかったよ……。予想と期待を両方裏切っちゃダメだよ……。
これはこの後、あらゆる長編シリーズで栗本薫が露呈してしまう欠点なのだが、キャラクターや道具立てを揃えるまではすごく上手いのに、その揃えた最高の素材を使うのがすごく下手なんだよね、薫は……。それで「うーん、使いみちに困るからホモ以外全捨てで」みたいなことするんだよ薫って女は……。
そんなわけで、読んでいるときは先が気になったし、だから面白かったといってもいいんだけど、展開にはまったく納得がいかないという、やはり複雑な巻ですね、これは……。
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