117 アンティック・ドールは歌わない ―カルメン登場―
1988.06/新潮社
1990.11/新潮文庫
【評】うな
● カルメン登場! そのまま退場!
愛の狩人・スーパーレズビアンのカルメンは、いなくなってしまった恋人の子猫ちゃんを探して街をうろつくのだが、そのたびに不幸な女に出会っていく――
おそらく前年に出版された『ハード・ラック・ウーマン』を発展させる形ではじまったシリーズの第一作にして最終作。
どこにでもいる不運な女を描くというテーマは、数こそ少ないが栗本薫がたしかな実績をあげているジャンルだし、一人の探偵役を軸にそれを連作で描く、という着眼点は悪くない。
が、肝心の主人公のカルメンさんが恥ずかしい。本気で恥ずかしい。
カッコイイ女、戦う女、情熱の女、というのをやたらプッシュしていて、むしろちょっときもい。リアリティまったくないし。どう情熱的なのかいまいちわからないし、彼女が捜している子猫ちゃんとやらがどんな女性なのかもまるでわからない。薫はどうしてこうもレズのタチを描くのがド下手なのか。とにかく読んでいていちいち身悶えしてしまう。
おとなしく別の主人公(それこそ『ハード・ラック・ウーマン』で主役を張った石森信とか)で普通に描いて欲しかった。ミステリーとしても弱すぎるからそっちの方面で薦めることも出来ないし。でも、これ新潮社から出しているし、ミステリのようなミステリでないような「大衆小説だけどちょっと文学臭もしますよ」的なシリーズを作ろうとしたのかしらん?
先に書いた『さらば銀河』同様、いままで着手していなかったタイプのシリーズを始めてみよう、という模索の一つだったのだろう。
いずれにしろ一作で終わってしまったから失敗なんですけどね……。ていうか『さらば銀河』には1とわざわざつけたり、こちらには『―カルメン登場―』とつけたり、やらなきゃいい大見得を切って見事に赤っ恥をかいている感じ、俺は嫌いになれないぜ?
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