115 天狼星Ⅱ
1987.11/講談社
1990.11/講談社文庫
【評】うな
● ホモになった大介と五年の放置プレイ
日本舞踊の天才青年、芳沢胡蝶が怪人シリウスに狙われているという。
名探偵伊集院大介は胡蝶を守るために動き出すのだが……
怪人シリウスとの対決第二弾。今度はお家物だ!
美青年の吉沢胡蝶をめぐり、お家の怨念や因習のあれやそれやがこんぐろまりっとしながら、いろいろあって、続く。みたいな!
「続く」じゃねえよ「続く」じゃ! そして五年放置はないだろ、五年放置は! おれはもうてっきりこの天狼星シリーズ、ひいては伊集院大介シリーズは、このまま中絶して消え去るだけだと思い込んでいたよ。こういうのは本当に困る。
で、話の内容ですけど、すごい美形の胡蝶さんは天才ですごい、という話。栗本先生のいつもの天才描写どおり、天才性の比重というのが顔にかかりすぎていて、日舞の天才という部分がよくわからないままに進行していくので、置いてけぼり感が強いです。栗本先生の描く天才はいつも最終的に「顔がすごい」「忘我状態になる」ばかりなのでげんなりですが、最初にげんなりしたのはこの吉沢胡蝶さんでした。
そのくせ、伊集院さんがいつになくこの吉沢胡蝶に肩入れしてあたふたしているのが、どうにも納得いかないというか、「お前、恋愛に興味がなかったんじゃなくてただの顔オタのホモだったのかよ」みたいな気持ちになってしまって、非常によろしくない。
そんな感じでして、このシリーズのいろんな意味での失敗を決定づけたのが、このⅡであったというのは間違いないかと思われますね、ハイ。
あ、そうそう。Ⅰの時点で、書き忘れていたけど理解に苦しむ点の一つに、森カオルの降板がある。
初期伊集院シリーズは、伊集院大介の友人である作家の「森カオル」という女性が書いているという設定で、(『エマ』を描いた漫画家・森薫さんとはなにも関係ありません)この人が伊集院大介に恋とも友情ともつかぬもやもやを持っているので、それが作品にいい艶を与えてくれていた。ありていに云えば、ラブコメ的に「この二人くっつくのかなー?」という楽しみがあった。
が、この森カオル、Ⅰの時点で、いままで出てきもしなかったキャラと結婚。(この詳細な顛末は二十年くらい経ってから、後述の『樹霊の搭』という作品で明らかになる)この後、シリーズ中からほとんど姿を消すことになる。
作品の色を変えるのに邪魔というか、お耽美するのに邪魔だったのかもしれないけど、なにもねえ、シリーズから姿を消すことないじゃないのよ。
正直、最初のトリオ、すなわち天然伊集院、おせっかいな森カオル、カタブツな山科警部補、の三人組が、一番おさまりが良かったと思うんだけどなあ。なーんで変えちゃうのかねえ。
そういう面を考えると、本当に天狼星シリーズは失敗だった。天狼プロダクションも存在しないほうが良かったのかも知れない。そうすればみんなが幸せなまま、あの黄金時代の夢にまどろみつづけられたのかも知れない。これはみんな悪夢……いや……いい……夢だった……。
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