103 グイン・サーガ外伝7 十六歳の肖像
1986.12/ハヤカワ文庫
<電子書籍> 有
【評】うな(゚◎゚)
●若きキャラたちを描く好短編集
グイン・サーガの主要キャラクターであるナリス、ヴァレリウス、マリウス、スカールの十六歳の頃を描いた短編集。
『闇と炎の王子――ナリス十六歳』
いい子ちゃんぶってたけど鬱屈していたナリス少年がグラチウスに誘惑されましたよ、というそれだけの話。
わりと無内容ではあるのだが、ナリスがちゃんと美少年でびびった。後年のヘタレオカマのイメージが定着してしまったため、高貴な美形キャラだったことを忘れかけていた。ちゃんと貴族だし性格悪そうだし美形だわ、この頃のナリス。
あとそれ以上にグラチウスに威厳があって吹いた。そんな時期もあったんだね……もうすっかり愉快なおじいちゃんのイメージしかないから……。
作品としては、この後、薫が書き足りなくて『星の船、風の翼』というナリス外伝を書いてしまったので、この短編の意味は一体……という感じはある。が、どちらかというと『星の船、風の翼』をなかったことにした方が良い気がする。
『暗い森の彼方――ヴァレリウス十六歳』
暗い森で偏屈じいさんと暮らしていたヴァレリウス少年が森を出て魔道師を目指すまでの話。
ストーリー自体は特に事件がないので退屈といえば退屈だが、根暗明るいヴァレリウスのキャラが生かされていて好きな話である。
冒頭でリーナス坊ちゃんとの出会いが、ラストでナリスとの出会いが描かれていて、その二人の間で揺れることになるヴァレリウスの未来を暗示しているのが良い。対極の二人をどちらとも魅力的に書いているからこそだ。実際にそうなったときは微塵も揺れずに「ナリス様ナリス様ナリス様おぉなんという……(カクカクカクカク)」って感じだったけど。
無能だけどお人好しなリーナス坊っちゃんとヴァレリウスの関係、好きだったんだけどなあ……。
『いつか鳥のように――マリウス十六歳』
宮廷からはぶられてひきこもっていたマリウスの前にあらわれた、キタラの名手である放浪の民。マリウスは彼からキタラの手ほどきをしてもらうのだが……というホモ家庭教師との禁断の恋に揺れる話(ちがう)。
ひとつところに留まれないマリウスの気性を描きたかったのだろうが、短編なのにマリウスがぶつぶつ思っているだけのシーンが多いため間延びしている。とは云え、マリウスのルーツとして考えるなら悪くない話ではある。
でもこんな十六歳、きもい。どんだけ幼いんだよ。
マリウスがミアイル死んだことをかなり気に病んでいて驚いた。そういえばそうだったんだよな……すっかり忘れていた……妻子ほっといて行きずりの女の乳を揉みたがる変態紳士のイメージしかなくなってたよ……。
『アルカンド恋唄――スカール十六歳』
いつものように草原を駆けていたスカール少年は、盗賊にかどわかされそうになっていた少女を助け、恋に落ちる。
だが二人の素性が結婚を許さなかった……
激しい愛を持ちながら、なおなによりも自由を尊び、そのためにはなにものもためらわず捨て去るスカールの男気萌えるのである。自由を愛するからこそ相手の決断を尊重し、苦渋の決断も世の理不尽も、すべて目を背けずに見届けるスカールさんマジ男前。
「世話になった」
なぜこの少年はいつもそうまで風に似るのか――。云った次の刹那、もう、かれは起き上り、身をひるがえしてうまやの方へ向かっていった。
こうしたやたら短くカッコイイ言葉が混じってくるのが昔の栗本薫なんだよな。晩年の薫は無駄に長くてなにいっているのかわからない文章ばかりだから困る。
総じて、単品としてそれなりに楽しめつつ、本編で描かれない一面が描かれキャラに深みをあたえる、外伝としては理想的な短編集。
まあ、ここで作ったキャラ設定、あとで全部ぶち壊されるんだけどね……
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