090 死はやさしく奪う
1986.01/角川文庫
1990.09/カドカワノベルス
【評】うな∈(゚◎゚)∋
● ジャズ×暴力×女=男の浪漫
十五年間恋しつづけた女が失踪した。
警察からそう聞かされたジャズマン・金井は、自らもその女、新藤麗子をさがしはじめるのだが、それは周到に仕組まれた罠であった……
かつての日活映画の世界だな、こりゃ。男の浪漫の世界。
男を利用しつづける悪女と、それを知りつつも追いかける馬鹿な男。果てのない男女の駆け引きに幕を下ろすのは、一発の銃弾。
とてつもなく気障で、ベタで、そこが素敵なハードボイルド。会話は軽妙でわかりやすく、世界にはいりこみやすい。
そして男の世界を叙情的にしあげた空気感がいい。いいね、これとくに最後の数ページの男指数の高さが素晴らしい。
こういう叙情的で女々しいハードボイルド小説を別の作家でももっと読みたいのですけど、あんまりないのですよね。男自慢みたいなのばかりで。やっぱりハードボイルド書くのって基本的に男性だから仕方ないんですかね。しょんぼり。
そんなわけでストーリー、およびハードボイルドとしては大好き。
が、曲がりなりにもミステリーとして読むと別にトリックとかがあるわけでもなく、登場人物の行動を冷静に考えると整合性がないといういつもの栗本ミステリのアレなので、文体が好きではないと辛い作品ではあろう。
なお、この作品には『キャバレー』の矢代俊一がちょい役で出てくる。本筋には絡まないのでファンならニヤリとする程度の要素で良い感じだ。が、十数年後に『キャバレー2 黄昏のローレライ』には今作の主人公の金井が矢代と長々と語り合うシーンが出て来る。これもまあ今作が好きな自分としては、ギリギリ喜べる範疇だった。
しかしさらに同人誌の矢代俊一シリーズにも出てくるようになり、今作であれほど一人の女を追いつづけた男が、いつの間にかすっかりと矢代俊一の尻を狙っているガチムチっぽくなってて、それはもう萎えたものでございます。今作を気に入った人は矢代シリーズ読むの禁止である。これはぼくとの約束だ!
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