029 鬼面の研究

81.11/講談社

84.08/講談社文庫


【評】うな



● 時代錯誤な読者への挑戦状が良し


 あるテレビ番組の撮影で、鬼がいたという伝承の残る山奥の村を訪ねた撮影スタッフの一人が殺される。おりしも唯一の出入り口が封鎖され、村に閉じ込められた一行は、事件と鬼伝承との一致に気がつくのだが……


 伊集院大介シリーズ第三弾。はっきり云って、コメントに困るぐらいにふっつーのミステリー。おそらく先生も普通のミステリーを目指したんじゃないかなあ? なんか読者への挑戦状とかついているし。こういう、恥ずかしくてなかなかできないことを空気を読まずにはしゃいでやっちゃうところが、若かりしころの薫の可愛さであり、魅力であったんだと思う。


 ……えーと、なんというか、もうコメントすることないよ。本当に普通だよ。悪いところはないがいいところもないよ。あっ、なぜか新本格作家の綾辻行人がこの小説が大好きなんだよね。多分、本格不在の時代に読者への挑戦状とかやってるところがよかったんだろうね。


 「ミステリーの作りかた」というマニュアル本があるのなら、その一例として載っていてもおかしくないような模範的なミステリーです。オチの「すべて人為的だと思わせて実は……」みたいなところも含めて、本当に普通の、しかしよくできてはいる話。

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