003 ぼくらの気持
79.06/講談社
81.08/講談社文庫
【評】うな(゚◎゚)
● 正当な続編であり青春小説
前作から二年――大学を卒業した薫クンと相変わらずの信は、編集者となった親友のヤスヒコと一年ぶりに会うことになった。
マンガ編集者としての苦境をかたるヤスヒコ。その三日後、二人はヤスヒコに呼び出され、その先で少女マンガ家の死体と、かたわらで動転するヤスヒコを発見する。ヤスヒコの「自分はやってない」という言葉を信じ、二人は事件の隠蔽と真犯人の捜索を開始するが……
大昔に、シリーズ三作まとめて読んだっきりでよく覚えてなかったので再読してみたんだが、いや、これ面白いね。ミステリとしては、わりとどうでもいいというか、あとだしが多すぎて卑怯だし、黒幕自体は即座にわかるしでけっこうひどいもんなんだが、普通にストーリーが面白い。
出だしの、三人でぼんくら学生していたのが、一人だけ就職してなんか変わっちゃったってくだりもちよっと切ないし、そこで編集者になったヤスヒコから語られる少女マンガ界の事情も面白い。
そこから少女マンガ家殺人事件が発生して、出てくるキャラ出てくるキャラみんな社会不適合者ばかりで、いかにもマンガ界らしいのも面白い。
特に殺されたマンガ家が、わがままでケチでアシスタントに冷たく、平然と盗作して「自分のアイデアだ」と言い張り、というか思いこみ、子供がそのまま大きくなったようなある意味ピュアな人、というあつかいになっていて、いかにもそれっぽかった。同じように、同人界隈の有名人が、巨デブで悪趣味なアクセサリじゃらじゃらで男が仲良いの見ると「ホモでしょ」と言い寄り生ホモ見るとキャーキャーわめく傍迷惑なキャラなのも面白かった。いそういそう、こういう人たち。
……ん、いそうというか……あれ? ……えーと、栗本先生……? く、栗本先生全部やってますよね、ここに書いてあるようなこと、後にほとんど全部やってますよね? え、なにこれ預言書? 恐怖新聞? どういうことだってばよ? ……ま、まあ栗本先生にはよくあることなので見なかったことにしておこう。
物語の構成に関しても、前作から二年という経過、登場人物の変遷をさらっと紹介しつつ、いきなりの殺人事件と事件の隠蔽工作からはじまり、次から次へとあらわれる変人たち、同人誌即売会への潜入、第二の殺人、その合間合間に主人公のラブロマンス、警察とのチェイスに、犯人とのカーチェイス、そして明かされる真相……と、実に飽きないようにエンタテイメントしちゃってる。主人公が真相を悟ってから、警察に(ひいては読者に)語るまでの、わざとらしくあざとい真相語りの引き伸ばしっぷりときたら、身悶えしてしまうほどエンタテイメント!
最初にも云った通り、ミステリとしてはいささかどうかと思うような点が多いが、エンタテイメントとして、そして大学を卒業した若者達の青春ストーリーとして、十二分に楽しめる良作となっている。
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