【Episode:06】 生死を賭して

血が零れた監禁部屋

 藍の監禁部屋の扉が内側に開かれ、覆面の男が、その黒ずくめの躯をぬっと覗かせた。

 開かれた扉の前に立った覆面の男が、顔をゆっくりと左右に振り室内の様子を窺う。藍の姿はないが、簡易トイレへと通じる左奥の扉が開かれており、コンクリート敷きの床の上に点々と零れた赤い液体が、その奥へと続いている。

 覆面の男が、銃を左手に、ゆっくりとした足どりでそこへとにじり寄る。

 その時――。

 開かれたままにされていた入り口の扉と壁の合間から藍が躍り出て、背を向ける覆面の男の肩口に、折られたマイクスタンドの鋭利な先端を、力一杯振り下ろした。

「ぐあっ!」

 覆面の男が奇矯な甲高い声で短く叫びながら、その場に膝をつく。だが、銃を手放しはしない。

 それを見てとると、藍は、折られたマイクスタンドをその場に放り、すぐさま開かれた扉から室外へと駆け出た。


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