【Episode:03】 一人目の犠牲者
先ず、一人
胸中の不安や恐怖が増すばかりで、なんの打開策も得られないまま、ただ限られた時間だけが悪戯にすぎていき、不安と緊張が高まる中、ノートPCのディスプレイの端に表示されているデジタル時計が午後十一時になったことを示したその時――。
不意に、内臓スピーカーがチャイム音を鳴らした。
同時に、扉が小さく軋みながら開く音が紛れた。
ディスプレイの左隅で、物憂げに顔を俯きがちにしていた空が、はっとその左手をマイクスタンドへと伸ばす。
抵抗を見せようと、伸ばしたその手――だが、その手が届く前に、内臓スピーカーの音を割りながら銃声が鳴り響き、藍の耳朶を震わせた。
空がその顔を歪ませ、画面から外れている左胸のあたりを両手で押さえるような所作をとりながら、苦悶に呻く声を上げつつ、椅子からずるずると頽れるようにしてウインドウから姿を消す。
その背後にあったドアの前には、あの覆面の男が立っていた。右手に構えていた銃をゆっくりと下ろし、腰に提げたホルダーへと差すと、黒ずくめの後ろ姿を覗かせながら室外へと出て、扉を閉じた。
驚愕に目を剥く者。
恐怖に震えながら、悲痛な叫びを上げる者。
怒りに唇を噛みしめる者。
顔を逸らし、悔しげにする者。
ただ、呆然とする者。
それぞれが、沸き起こる感情に身を委ね、ウインドウから消えた空の呻き声が次第に弱まりながら届く中、内蔵スピーカーが、あの奇矯な甲高い声を鳴らした。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます