第33話 ポップコーン

ポップコーンの香ばしい匂いが充満した。

第三体育館の封鎖を確認して少し安心したので間食にする。

レンジでチンするだけのポップコーンは便利だ。

コーラを飲んでいるとハルカワが話しかけてきた。


ハルカワ「第三に食糧あったかな?」


俺「たぶん無い。紫さん、どう?」


念のため人工知能の紫さんに第三体育館に食糧があるか聞いた。


紫さん「いえ、ありません機長。」


食べられる素材で出来たものも無いために食糧ゼロだと言う。

ただし水は少しある。

怪我をした時のための応急処置セットが第三体育館に保管している。

そこに傷口を洗うために数リットルの水ボトルがある。

緊急時とはエアロックの故障のために移動出来なくなった場合だ。

その際に水ボトルで修理の時間を稼ぐ。

とはいえ水だけでは数日でギブアップだろう。


A子は封鎖された第三体育館内を無重力で器用に浮きながら移動している。

ハルカワは彼女の整った顔と無骨な宇宙服のギャップを楽しんでいる。

確かに美人に白い宇宙服(ヘルメット無し)は奇妙に似合っている。

監視カメラのレンズはA子の髪型を整える動きまでとらえている。

まるで一人暮らしの女性の部屋を盗み見ているような感覚だ。


地球の本社からの対応策が追加で上がってきた。

このまま封鎖を続けてA子が折れるのを待つ作戦だ。

腹を空かせたA子は自ら再び冷凍睡眠装置に入るだろう。

そうしなければ彼女は餓死するのだから。

冷凍睡眠装置の操作マニュアルは紫さんにスピーカーで流させた。

彼女が装置で眠った後に切り離し作業を行う。

早く第三体育館を切り離して惑星に投下したいものだ。

そのミッションを行わないと我々は帰還出来ない。


キッチンで監視カメラの映像を見ていてあることに気づいた。

A子は無重力を飛びながら第三体育館の監視カメラを発見していた。

彼女は応急処置セットの包帯を使って次々とカメラレンズを覆っている。

連続殺人犯A子を監視するカメラの目が全て失われた。

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