第34話 水ボトル

第三体育館の全ての監視カメラがA子により遮断された。

彼女の動向がつかめなくなるよりも重大なリスクがある。

火災だ。


もし今、第三体育館で火災が起きると映像で判断出来ない。

もちろん火災警報器のセンサーがあるため消火は可能だ。

いざとなれば後部ハッチ全開で空気を抜いて消火するつもりだ。

しかし初期消火は確実に遅れるだろう。


俺「A子、ねばるね。」


ハルカワ「ねばってる、もうすぐ24時間経過。」


24時間というのは水ボトルを消費してからという意味だ。

食糧は元から無いのでA子は三日間は絶食状態だ。

それに加えてもう24時間は彼女は水を口にしていない。

俺自身の経験からいうと人間は24時間水を飲まないと異変が起きる。


昔サバイバル訓練中に水が切れて我慢したことがある。

その時は24時間ほどで飲み水の事しか考えられなくなった。

そして、だんだんと体がサビついたように動かなくなってしまう。

A子もこのあたりが限界点だろう。

彼女の場合は冷凍睡眠から起きたばかりで、さらに厳しいはずだ。


ハルカワ「本社からの新たな指示は?」


俺「いや、このまま隔離してA子が冷凍睡眠装置に入るのを待つ。」


ハルカワ「彼女、自分で入るかな?」


本社からの指示で、A子が装置に入るのを待っている。

A子が入れば、俺たちが第三体育館に入って装置を外部から封印する。

もしまた彼女が目覚めても装置の外に出られないようにするためだ。

封印した冷凍睡眠装置は後部ハッチを開けて搬出する。

それを第二の後部ハッチから搬入して固定。

代わりに第二のハルカワが入っていた装置を第三に移動。

つまり第二と第三の冷凍睡眠装置を入れ替えるわけだな。

それが済んだら三つの体育館を切り離して惑星に投下する。

第二体育館は俺とハルカワと凍ったA子が乗って地球へと帰還する。

手順は複雑だが何とかなるだろう。

しばらくして緊急ブザーが第二体育館に響いた。


紫さん「機長、第三体育館の右エアロックが開きました。」


ハルカワ「A子か? 右エアロック?」


俺「右って宇宙空間へ出るハッチだぞ?外部カメラ映像すぐ。」


モニターにはエアロックから白い宇宙服が宇宙空間に出ているのが映った。


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