第23話 打撲
次の日には本社の軽見部長から通信が来た。
昨日の第一体育館での大騒動を報告しなければならない。
モニターのあるキッチンのテーブルでハルカワと同席したので気まずい。
ハルカワの目の上と鼻の下はラクダのようにボコッと腫れている。
俺の左目はパンダのように青黒くなっている。
通信にタイムラグがあるため食事中断の際に要点をまとめる。
軽見「おはよう機長、ハルカワ君、カメラで見えているが怪我の具合はどうだ?」
俺「おはようございます。軽見部長、軽い打撲です。大丈夫です。」
ハルカワ「・・・同じく大丈夫です。」
軽見「そちらの人工知能からは暴力事件だと報告を受けたが?」
俺「いえ、それほどのことではありません。」
軽見「ハルカワ君? そうか?」
ハルカワ「はい、問題ありません。」
軽見「では、なんだったんだ?」
俺「・・・・・・。」
ハルカワ「・・・・。」
軽見「昨日の第一体育館のカメラ映像も全てこちらに届いとるぞ?」
俺「ハルカワが空手の有段者だということで稽古をつけてもらいました。」
ハルカワ「?」
軽見「空手?ハルカワ君の経歴に空手は無いはずだが?」
俺「はい、私の勘違いでした!」
軽見「はーん。勘違いなあ。ほう。」
ハルカワ「こちらも勘違いをしてました。」
軽見「君も勘違い?」
ハルカワ「はい、機長はキックボクシングを趣味にしてると聞いていました。」
俺「?」
ハルカワ「いつでもスパーリングの相手になるということでした。」
軽見「機長の経歴にキックボクシングは無いが?」
ハルカワ「はい、私の勘違いでした!」
軽見「ほう、面白いな。二人とも勘違いで殴り合ったと?」
俺「はい。」
ハルカワ「はい。」
軽見「・・・分かった。それで今後再び ”勘違い” が起こることは無いか?」
俺「はい、殴る前に話し合いをしますので、ありません。」
軽見「じゃあ軍の方には、良い感じに報告しておくか。」
ハルカワ「・・・。」
軽見「あ、それとハルカワ君な。エアロックで遊ぶのは危険だ。」
ハルカワ「はい。」
軽見「万が一遊んでいる最中にハルカワ君が気絶すると機長が死ぬ。」
ハルカワ「はい。気を付けます。」
食後にハルカワが動物プリンを4つ出してきた。
いつからか俺が食事の準備、彼がデザートの準備と役割が決まっていた。
最初の一つは俺がパンダのプリンだった。
ハルカワはラクダのプリンだったので二人で顔を見合わせて爆笑した。
二つ目のプリンは俺の方が好物のアヒルさんのプリンだ。
・・・ハルカワのやつめ。気が効いてるな。
彼の方は不気味なワニのプリンを選択していた。
アヒルさんのプリンには赤いチェリーの実が入っている。
チェリーの実がクチの中の傷にしみた。
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