第22話 火花
目の前で美しい金色の火花が細かく散った。
ハルカワに殴り掛かった俺は彼と激しい殴り合いになった。
彼の右ストレートが俺の左目付近に当たり火花が散ったように見えた。
これだけ派手な火花が見えているのに音が全くしないのは変だと思った。
痛みは少ないが俺はそのまま後ろへ転倒した。
後ろに置いてあったクリームコロッケのビニール箱に頭をぶつけた。
足のチカラが入らないのでうまく立ち上がれない。
中腰のままの体制だとハルカワの蹴りが頭に届く高さなので距離をつめた。
俺が彼の胴体に強くタックルする形でこう着状態に入った。
そもそもの発端はハルカワが俺をエアロックに閉じ込めたことが原因だ。
彼はイタズラ気分かもしれないが度を超している。
今回は殴らなければならない。
殴ることは悪いのかもしれないが殴るべきだ。
彼は軍人なので俺は勝てないと思うが殴るべきだ。
俺が最初に殴りかかる直前にハルカワは上方を指さしていた。
あれは第一体育館の上部の監視カメラを指している仕草だな。
もし殴ってもすぐに本社に映像が届くからやめろという意味か。
思い出してまた腹が立った。
俺のタックルで彼はフィッシュ系保存食の梱包に押し付けられている。
細かい彼のパンチがタックルをしたままの俺の顔にコツコツ当たる。
俺の頭が彼の脇腹に密着しているのでダメージは小さい。
しかし俺の鼻からは鼻血が流れ出した。
そういえばハルカワの最初のパンチは思ったほど強くはなかった。
彼は手加減しているのか?
ファンバッグにまだ慣れていないからか?
ファンバッグとは背中に背負った疑似重力発生装置だ。
常に天井方向へ空気を吹き出して体を床へ押し付けている。
この疑似重力は微妙に地球上とは異なる。
慣れが必要だ。
いくら軍人でも慣れない疑似重力の中での殴り合いは難しいだろう。
この点では俺に六か月の利があると言える。
タックルでしがみついている俺の首にハルカワの腕がからまってきた。
首を絞める技に入る気だ。
この絞め技が極まれば俺は意識を失うだろう。
しかしこのタックルを外すわけにはいかない。
体が離れた瞬間にまた強烈なパンチが飛んでくる。
するとハルカワの腕がゆるんで彼のヒザが俺の胸あたりをヒットした。
タックルが外れた俺は、またハルカワを殴るために構えた。
彼は意図的に絞め技を使わなかった。
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