第21話 火災訓練

第一体育館エアロック内に閉じ込められた俺は人工知能の紫さんと通信している。


俺「ハルカワ君の居場所は?どこ?今。」


紫さん「第一体育館の左エアロック付近です。」


俺「もしかして意識を失っているとか?」


紫さん「いえ。ニヤニヤしています。」


俺「インカムは?彼の?」


紫さん「さきほども言いましたが彼はインカムを外しています。」


俺「なんなんだ!これは!」


紫さん「機長、ハルカワさんのキツイ冗談というかドッキリかと思います。」


俺「ドッキリ?リスクは変わらん。今この無線状態は?」


紫さん「はい。機長と私のプライベート通信です。」


俺「無線を機内スピーカーにオープン。」


紫さん「はい機長。この会話を機内に流します。」


(第二体育館には高性能マイクがある。

この第一と第三体育館にはマイクは無いがブザーを流すスピーカーがある。)


俺「機長より。これより第一体育館の火災訓練を行う。承認を要求する。」


紫さん「機長、第一体育館のハルカワさんは宇宙服を着てませんが?」


俺「分かってる。機長権限で緊急要請だ。」


紫さん「・・・なるほど。分かりました機長、火災訓練を承認します。」


俺「紫さん、手順を説明して。」


紫さん「第一体育館で火災が起きたと仮定します。」

紫さん「後部の資材搬入用大型ハッチを電動で開け緊急に全ての空気を抜きます。」

紫さん「ハルカワさん、早くしないと酸欠で死にますよ。」


紫さん「機長、ハルカワさんがエアロックのワイヤーをほどいています。」


俺「火災訓練を一時停止だ。」


エアロックの内扉が開くのを待つ間に宇宙服を脱いだ。


紫さん「機長、きついドッキリですが、ハルカワさんに悪気は無いようですよ。」


紫さん「彼も反省してワイヤーを外したわけですし、ここは穏便に。」


紫さん「機長、何事も話し合えば分かります。まずは話をして・・」


エアロックの内扉が開いた瞬間、俺はハルカワを殴るために飛びかかった。

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