第17話 身元

ハルカワ君が寝ている間に地球の本社からの通信を受けた。

タイムラグがあるので、うたた寝をして待ち時間を過ごした。

軽見部長がメーカー担当を呼び出して事情を聞いた。

それによると陽野社の冷凍睡眠装置「ひまわり」が貨物の正体だ。

この装置は人間を生きたまま冷凍して短時間で解凍することが出来る。

これは大事故で医療が間に合わない場合に冷凍することを目的に開発された。

戦場で出血が止まらない場合などに負傷兵を冷凍して大病院に運び込むという。

ああ、だからハルカワ君は陸軍所属なのか。


俺「そのハルカワ君ですが、どんな人物ですか?」

軽見部長「身元はしっかりした人物だ。そこは心配ない。」

俺「宇宙で、うまくやっていけますかね?」

軽見部長「君より少し若いが、しっかりしとると聞いた。」

俺「少し安心しました。」

軽見部長「それで会社としてはこのまま計画通りにフライトして欲しい。」

俺「ええ、あと半年で目標の惑星に着きます。」

軽見部長「そこで貨物を降ろしたら彼と一緒に地球に帰還してくれ。」

俺「分かりました。それで彼の食糧の件ですが。」

軽見部長「そうだった。彼の食べた分は軍が全て支払うことになっとる。」

俺「そうなりましたか。食糧は余分がありますから問題無しです。」

軽見部長「あと、君の分はメーカー側が持つということでどうだろうか?」

俺「ぜんぶ陽野社が負担する?」

軽見部長「そうだ。想定外の事で君の仕事も増えるだろうから。」

俺「悪くない提案ですね。じゃあ、それで手を打って下さい。」


無料食べ放題か。悪くないね。

高級食材の牛肉とかあったよな。

絶対に食べてやる。


メーカーとしては長距離冷凍睡眠試験として装置を乗せていた。

第一体育館と第三体育館は切り離して惑星に降ろす。

この第二体育館の貨物はずっと降ろさない。

俺としては降ろさない貨物ということで測定器かなと思っていた。

あるいは無重力での耐久試験とも考えた。

メーカー側は長距離でも装置が耐えられるか試験するわけだから当たっていた。

何事も起こらなければ誰にも知られずに往復するだけ。

メーカーとしては何らかのトラブルで強制的に解凍されるとは思っていなかった。

軍からの依頼ということもあって貨物の詳細は伏せたらしい。


軽見部長「色々すまなかったな。」

俺「いえ、部長も知らなかったわけですし。」

軽見部長「こちらがもっと突っ込んで調べておくべきだった。」

俺「まあ、話し相手が出来て良かったです。」

軽見部長「そうか。ちなみにハルカワは妻帯者だそうだ。」

俺「へー。若いのにしっかりしてる。」

軽見部長「他に質問は?」

俺「第三体育館にも同じサイズの陽野社の貨物があるんですが?」


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