第16話 冷凍

後部に立っていた男から名前はハルカワだと自己紹介された。

コールドスリープ装置から出てきたと言っている。

あの自動車ほどの大きさの貨物がその装置か。

地球で冷凍睡眠状態に入ったハルカワはもう半年以上は寝ている。

そしてついさっき起きたようだ。

冷凍睡眠から起きた理由については聞いても分からないと言っている。

彼の推測では装置に何らかの異常があったのではないかということだ。

無重力は動きにくいので彼にファンバッグを背負わせた。

このバッグは常に空気が上に吹き出して疑似重力を作る。

腹がへったと訴えるのでカニを温めて食べさせた。


俺「ハルカワ君は志願したの?」

ハルカワ「ええ、やはり死ぬリスクがあるので。」

俺「へえ、やはり志願か。それで予定ではどうだったの?」

ハルカワ「予定では冷凍睡眠状態で行って帰るだけ。」

俺「ずっと寝たままで無駄に宇宙に行って帰るだけ?」

ハルカワ「無駄じゃなくて、実験。」

俺「なるほど。宇宙空間での冷凍睡眠での長距離移動試験ね。」

ハルカワ「うん。そう。」


地球から半年ほど進んだ場所で意図せず覚醒したという。

本社に連絡してコールドスリープ装置のメーカーに詳細を問い合わせた。


俺「感じからするとハルカワ君は陸軍所属?」

ハルカワ「ええ、部隊名は教えられないけどその通り。」

俺「極秘任務ってやつか。」

ハルカワ「まあ一般には公開されないけど。」

俺「カニ美味い?」

ハルカワ「美味い。ゴハンとかあれば?」

俺「あるよ。」


美味いに決まってる。

彼にとっては半年ぶりの食事なのだから。

冷凍カニが解けるのとハルカワが冷凍睡眠から起きるのとシンクロしてる。


ハルカワ「機長は民間所属?」

俺「うん。民間。」

ハルカワ「結構デカい機体だけど。」

俺「ああ。体育館サイズが3つ連結してるよ。」

ハルカワ「3つ。他に乗員はどのくらい?」

俺「乗員は俺ひとりだけ。」

ハルカワ「え?本当に機長ひとり?」

俺「ああ。俺ひとりだよ。」

ハルカワ「・・頭おかしい。」

俺「・・・・」

ハルカワ「・・・」


彼はその後、眠たいと言ってすぐ寝た。(普通睡眠で。)

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