第15話 後部
体育館の後部の暗闇に見知らぬ男が立っていた。
男はこちらに向かって軽く頭を下げた。
俺も反射的に頭を下げて会釈してしまった。
すると頭を前に倒した勢いで、俺の帽子の上のカニが飛んで行った。
両面テープが甘かったのでクルクル回りながら無重力をカニが飛ぶ。
飛んだ先に男が居たため彼が両手で凍ったカニをキャッチした。
男「・・・・」
俺「・・・」
男「・・・カニ?」
俺「・・・」
男「・・・」
俺「・・・ちょっと待ってて。」
俺はダッシュで体育館前部のコックピットに入ってハッチを物理ロックした。
なんなんだアレは?
確かに見たことも無い男が立っていた。
カニキャッチをしたので幻覚とも思えない。
カニキャッチ?
まあ良いか。
俺が裸で馬鹿みたいに踊っているのをヤツに見られたか?
カニが飛んで行ったのは俺が男を見た後だから見られている。
見られたに違いない。
いや、それはどうでも良い。
今はアイツが何者なのかということだ。
そうだ人工知能「紫さん」に聞くことがある。
俺「体育館の後ろに男が立ってるのが見えた。リアルか?」
紫さん「はい機長。監視カメラでもとらえています。」
俺「ホログラムやVRではないリアル人間か?」
紫さん「はい。実体です。」
俺「バケラッタでは無いんだな。」
紫さん「はい機長。」
俺「あの男は何者だ?」
紫さん「はい機長。分かりませんが後部の貨物が開いています。」
俺「貨物ね。監視カメラ映像をモニターに。」
紫さん「はい機長。」
カメラ映像ではこの第二体育館の後部の貨物が映っている。
暗くて分かりづらいが赤外映像にすると自家用車サイズの貨物が良く見える。
そのフタが開いている。
あそこから出てきた?
俺「映像巻き戻し。」
紫さん「はい機長。ちょうど10分前に貨物のフタが開きました。」
俺「その時すぐ知らせろよ。」
紫さん「はい機長。しかし24時間はブザー禁止命令が。」
俺「あ、いや、そうだがコレは知らせろよ。さすがに。」
紫さん「・・・・。」
俺「・・・・。」
紫さん「ンポ。」
俺「とりあえず地球の本社に連絡開始。男の正体を聞いて。」
紫さん「はい機長。連絡していますがタイムラグで時間がかかります。」
俺「分かった。あの貨物は何なんだ?」
紫さん「貨物の内容については知らされていません。」
俺「・・・分からずか。」
紫さん「はい。」
俺「今から俺はコックピットを出るからな。」
紫さん「はい。」
俺「その後このハッチを完全ロックして俺以外は絶対に入れないように。」
紫さん「はい機長。」
俺は服を着てコックピットのハッチを開け、ふるえる足で体育館後部へ進んだ。
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