第10話 通信

会社側と通信して状況を報告した。

地球との通信は片道数時間かかるので、数項目がどっさり一気に送られてくる。

それに俺はひとつづつ答えてまとめて送りかえす。

しかし読みにくいので表記は一問一答に直して記述することにする。


軽見「機長、体の調子どうだ?」

俺「部長、おひさしぶりです。運動もしてますし良いですよ。」


軽見「食事は美味しく食べとるか?」

俺「はい、ですがやはり価格が高すぎますよ。」


軽見「月面までの輸送費もかかっとる。日給も高く設定してるから。」

俺「分かってます。」


軽見「人工知能との会話はこちらでもトレースしとる、感想は?」

俺「あいつは真面目ですね。うまくやってます。」


軽見「紫さん?だっけ?真面目というのはどういった感じ?」

俺「はい。冗談は言いませんが、仕事キッチリです。」


軽見「2番冷却器の件は?」

俺「修理しましたがイマイチなので継続です。」


軽見「そうか。担当に言っておく。太陽電池パネルは?」

俺「はい、パネル交換せずに済みそうです。」


軽見「他に何かある?」

俺「第三体育館の貨物の件ですが。」


軽見「貨物?中身は教えられないぞ。」

俺「なぜですか?」


軽見「開発元企業との秘密保持契約だ。まだ市場に公開されてない。」

俺「しかし爆発や火災のリスクを考えますと。」


軽見「その点は確約をもらっている。貨物に爆発物は積んでない。」

俺「そうですか。火災は?」


軽見「火災は電気を使う機械なら常にリスクがある。」

俺「この輸送機自体もリスクは同じだと?」


軽見「ああ、だからセンサーとカメラで人工知能が24時間監視している。」

俺「はい。消火訓練は入念にやってますが、限界もありますよ。」


軽見「限界はあるが是が非でも貨物を届けないとならん。」

俺「テラフォーミングの件ですか。」


軽見「そうだ。1年遅れればその後の計画がどんどん遅れていく。」

俺「はい。」


軽見「例えば事故で君が死ねば安全設計から全て見直すことになる。」

俺「はい。分かります。」


軽見部長は会社の業務を優先させるが現場のことも気にしている。

これからの予定では目標の惑星についたら周回軌道に乗る。

地表を観測してから第一と第三体育館を切り離す。

それらが着地したことを見届けたらこの第二体育館は月へと帰還する予定だ。


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