第6話 コックピット

ビービービーとブザーが鳴り響いた。

第二体育館の後部の貨物の近くで点検作業をしていた俺はこう聞いた。


俺「紫さん、どうした?緊急か?」

紫さん「はい機長、監視中の隕石の軌道が衝突危険度1になりました。」

俺「分かった、すぐそっちに行く。」


第二体育館にはスピーカーとマイクが設置されている。

俺が声を出すだけで人工知能「紫さん」と音声で会話が出来る。


俺は作業を中止してコーヒーの保温ポットだけをつかみ体育館前部へ移動した。

このブザーが鳴ったら全ての作業を中止してコックピットに入る規則だ。

体育館のような大きさの機体のステージ部分にある区画へ入った。

この区画はジャンボジェット機のコックピットによく似ていると思う。

正面に外部カメラの映像やレーダー画像が表示される大型モニターがある。

手元には操縦系のコントローラーがやスイッチが配置されている。

隣には紫色をした丸テーブルのような人工知能が設置してある。


俺「紫さん、状況報告して。」

紫さん「はい機長、監視中の隕石の軌道が衝突する可能性が高まりました。」

俺「衝突危険度1だな。」

紫さん「はい機長、仮に機体に衝突しても耐えられるサイズです。」

俺「なるほど、小さいな。このサイズならば回避行動は必要ないな。」

紫さん「はい、念のため警報ブザーを鳴らしました。」

俺「衝突予定時刻は?」

紫さん「約2時間後の予定です。」


輸送機ゼラニウムは隕石の衝突に備えている。

大きな隕石はこの輸送機が軌道を変更して回避する。

小さな隕石は推進剤を節約するため回避しない。


隕石が大きければ大きいほどレーダーに映りやすくなる。

何週間も前に発見できれば回避自体は難しくない。

小さい隕石は発見が遅れてしまう。

しかし小さければ衝突しても貫通はせず機体のダメージは少ない。


2時間後に隕石が機体に衝突したとの報告を受けた。

すぐさま外部カメラで点検したが、機体には弾痕のようなものが確認された。


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