第3話 カレー

シュッと炭酸が抜けるような音がした。

エアロックを通って点検作業のために隣の第一体育館へ入る。


この輸送機ゼラニウムは体育館が三つ並んでいるような外観をしている。

左から第一、第二、第三体育館と通称で呼ばれている。

コックピットは第二体育館にあるために俺は普段そこにいる。

今日は点検作業で第一体育館へ来ている。


全ての体育館は空調が動いているために船外活動用宇宙服は着ていない。

俺しか乗っていないのに、ここまで空調を動かしているのはもったいないと思う。

そのおかげでシャツとズボンだけで作業できるのだから文句を言う立場ではないが。

聞いた話では空調設備の耐久試験も兼ねているという。

実際の宇宙で空調機器がどれだけ故障せずに動くかのテストのようだ。


この第一体育館は食糧が満載されている。

人が通れる通路が作られているが、ほぼ食糧が積載されている。

テラフォーミングの後発隊のためにあらかじめ運んでおく。

もちろん後発隊も手持ちの食糧を持っていくが、予備食糧はいくらあっても良い。


食糧が荷崩れしていないか等を俺は定期的にチェックする。

空調など生命維持系をチェック、電力ラインをチェック。

チェック、チェック、チェック、チェック、

無線通信ヘッドセットから人工知能「紫さん」の声が聞こえた。

そろそろお昼だと言っているので、切り上げて第二体育館へ帰るとするか。

今日のお昼はコクカレーイチバン屋のカレー弁当にするかな。

価格は3万円で痛いが、コクイチのカレーは美味いからな。



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