エピソード1『ゲームと私』⑤
――3時間後。
「す、すごい……」
私は、手元に積み上がったメダルかごの山を、ただ呆然と見つめていた。
かごの数は、100個ぐらいはある。
実は、あれから確変も重なり、私の当たりは止まりに止まらなかった。
夢中になった。
のめり込んだ。
1人で恥ずかしいなんて考えは微塵もなかった。
そして、3時間近く続いた確変も終わり、気づくと手元には、こんなに大量のメダルがあった。
でも、どうしよう。
お金に換金できないし、この莫大な量のメダルを今日中に使いきるなんて……
「あっ、そうだ」
そういえば、メダルって預けることができるんだった。
よし。
とりあえず、今日のところは、預けて帰ろう。
「う~ん……」
でも、困ったな。
この大量のメダルをカウンターまで持っていくなんて不可能だよね。
あっ、そうか。
店員さんに来てもらえばいいんだ。
「よいしょっと」
私は、店員さんを呼ぼうと席を立ち上がった。
すると、その時、
「お客様、少々よろしいですか?」
ちょうどいいタイミングで、男の店員さんが私の席に来てくれた。
「大当たりですね。こんなラッキーはめったにないですよ」
「は、はい、全くの初心者なんで、ビギナーズラックってやつですよ」
私は照れながら、頭をポリポリとかいた。
何だろう。
何だか、すごく優越感に浸れるな。
あっ、そうか。
メダルは、この場所だけで使えるお金みたいなものだもんね。
お金持ちの気分を味わえるから心地良いのかな。
でも……この店員さんから見たら、私ってどう思われてるのかな。
やっぱり、心の中では、ひいてるのかな?
20歳を越えた女が1人で、こんなに大量のメダルを抱えていることに、すっごくひいてるんじゃないのかな?
こんな風に思ってたらどうしようかな。
『何こいつ? 1人でこのメダルの量って! 絶対、彼氏なんかいないよな。きっと毎日、朝から晩までひたすらメダルゲームするんだろうな』
って、こんな感じで思ってるんじゃないのかな??
あ~、もう、そう考えるとやっぱり恥ずかしい。
とっとと預けて、早く帰ろうっと。
そして、次からは絶対、ユカッチと一緒に来なくちゃ。
間違っても、1人で毎日通って、常連のおばちゃんと仲良くなったりしちゃダメだわ。
私は、新しい恋を探さなきゃダメなんだから。
メダルゲームで時間を潰してちゃダメなのよ。
「あの……新規で預けたいんですけど、手続きお願いします」
「かしこまりました。では、こちらに記入をお願いします」
私は、店員さんに指示されるがまま、新規預け入れカードに、必要事項を記入した。
そして、ゲットしたメダルの枚数を聞いてびっくり。
10万2413枚――
なんと、10万枚を越えていた。
すごいな。
ありえない量になっちゃったな。
まさか、10万枚を超えるなんて……
ん……?
10万枚……?
「あっ!」
そ、そういえば!
私は、急いでカウンターのポスターに目をやった。
《目指せ! 保有メダル枚数10万枚! 素晴らしい特典があるよ!》
そこには、やはりこう書かれてあった。
そうだ!
そうだよ!
保有メダル枚数が10万枚を超えると、特典があるんだった。
「あ、あの!」
私は急いで尋ねた。
「そこのポスターに書いている特典って何ですか?」
「それはですね、今まさに、お話しようとしていた事なんですよ」
とりあえず、と店員さんは言った。
「特別室にご案内いたします。担当の者から詳しい説明をさせていただきますね」
「は、はい!」
私の緊張は、もうピークに達していた。
ど、どうしよう。
特典って何だろう??
と、とにかく、
すっごく楽しい1日になっちゃった~~!!
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