第130話 出発の朝

 エーデルクルスの宿泊施設にて、一人寂しく過ごした夜が明けた。

 必要最低限の物しか置いていないが、実に趣のある雰囲気の良い部屋だ。

 古木で出来たベッドは体を包み込むような温かさがあり、町の宿屋とはまた違った安らぎに心身ともに癒された。

 鳥の囀りならぬ犬の遠吠えに目を覚ましたわしは、――オルハは朝から元気だな――と眠気眼を擦りながらも身支度を整えて施設を出る。

 レブルゼーレの様子も気になるため、一先ず聖域の広場へ向かったところ――そこには仲間たちどころかアルティアにエステル、そしてドワーフたちの姿までもがあった。

 ……ベルファールは――きょろきょろと辺りを見渡し、樹に背もたれる彼女を見つけて安堵する。つまらなそうな顔をしているが、逃げずにちゃんと集まっているところは律儀だな。感心感心。


「やっと起きてきたか。おっさん、遅せえよ」

「ずいぶんとお寝坊ですね。そんなに疲れていたんですか?」

「遅い? 二人はなにを言っとるんだ。オルハの遠吠えは鳥の囀り代わりだろう? ということは、まだ早朝。つまりは六時とか七時くらいということになる」

「勇者さん、もう十時だよ?」

「……え?」

「オルハが鳴いてたのは、イルマとお別れしなきゃだから悲しんで、だよ。オジサン」

「イルマ?」


 楓が視線を向けた方へ目をやると、名残惜しむようにオルハの首筋にぎゅっと抱きつくイルマがいた。その目尻にはきらりと涙が光っている。


「長いこと見ていなかったから、すっかり忘れるところだった……。しかし相変わらず仲が良いな」


 わしは一人と一匹に温かな眼差しを注ぐ。きっと魔物が攻めてきた時も、オルハがイルマを守っていてくれたに違いない。種は違えど、そこには確かな友情と絆が存在しているのだ。

 だがどれだけ仲良くなっても、別れというものはやってくるもの。住む場所が違うし、認められたとはいえ人とハイエルフなのだから。

 それを理解しているからこその涙なのだろう。

 沈痛な面持ちで見守るわしら。

 そんな中。エステルから細枝で編まれたブレスレットのような物を受け取ったアルティアが、イルマの肩を抱いてそっとそれを差し出した。


「イルマ。泣かないで、顔を上げて」

「……アルティア様、――これは?」

「聖都エーデルクルスへの通行証よ。勇者の知り合いということもそうだけど、なによりオルハがこれだけ懐いている人間を私は知らないから、少なくともあなたは信用できる人間だと思う。だから渡しておくわ。結界の石柱を新造しても、世界樹の枝で作られたそれの効力は失われない。会いたくなった時に、いつでも会いに来てあげて」


 アルティアの言葉に、イルマは大粒の涙をこぼしながら「ありがとうございます……」と泣き笑った。

 出会ったばかりの頃の、人間を毛嫌いしていた彼女の姿はどこにもない。まあ、ほかの人間に対してはまだ分からんがな。だが、少しでもわだかまりが解けたのなら、わしらがここへ来た甲斐もあったというわけだ。

 わしが「うむ」と一つ頷いた時、「――なら今度は俺たちからワルドたちへの贈り物だ」とゴルディールが進み出た。

 膨れた大きな袋を担いだリディルがそれに続く。


「贈り物?」

「リディル、袋を開けてやれ」

「はいよオジジ!」


 元気よく返事をし、リディルが袋を地面に置いた。そしてわしらを見るなり二ッと笑って、おもむろに袋の口を開ける。

 中には鎧、服、グローブ、ローブ、髪飾りなどの武具。それといくつかのアクセサリーと飲み薬などのアイテムが入っていた。


「ゴルディール王、いつの間にこんなものを用意していたのだ……」

「竜の巣からお前たちが戻ってきた時、いくつかの宝を持ち帰ってきただろ? ドラゴンレクターどもとの戦闘後に、リディルに仲間たちの採寸をさせてな。素材を元に鎧と武器は俺たちが、服とローブに髪飾り、そしてアクセサリーはハイエルフたちが作ったんだ」

「ほらほらみなさん、さっそく新装備の具合をたしかめてみてください!」

「ああ、恩に着るぜ」

「感謝の言葉しかないわね。お言葉に甘えるわ」

「ありがとうみんな。じゃあわたしたち、ちょっと着替えてくるから。ここで待ってて、二人とも――」


 そうして、ライア、ソフィア、クロエの三人は着替えるために席を外した。

 わしもお着替えをご一緒したい衝動に一瞬駆られるが、そこでふと気づく。


「……あれ? 楓はよいのか?」

「うん。アタシはほぼ完全体だしねー。あれだけの戦闘でも、お師匠からもらったこの装束、焼けも裂けもしてないしさ。かなり丈夫だよコレ。さすがお師匠の妖気を織り込んだ反物で出来てるだけあるね」

「そうか。楓を想う玉藻の愛情が感じられるな」

「ちょー盛られてる感じするよね~、それもマシマシのモリモリでねっ」


 快活に笑う楓につられてわしも笑みがこぼれた。

 玉藻に会えなくて楓も寂しいはずだ。だがこうして前を向いている。そのひたむきで健気な姿勢に、つい感極まりそうになった。

 と、そこでもう一つ気になることが。

 楓はまあいいとして、問題はわしだ。


「こんなことを言うのもおこがましいことだとは思うが……。わしの装備はないのだろうか?」

「ワルドの? ああ、言われてみればお前の鎧、ボロボロだな」

「いま気づいたのか?」

「それに見慣れていたからな。いま思い出したんだ」


 たしかに、上の世界で皆からプレゼントされたこの『アールジェラの鎧(150000G)』が傷ついてから久しい。しかしボロボロが見慣れて今しがた思い出されるほど、わしはみすぼらしくないぞ!


「なんちゅう失礼な……」

「まあそう拗ねるな」

「もしかしてあるのか? わしの鎧!」

「ない」

「すげないな……」


 取り付く島もないとはこういうことか。

 がっくしとうな垂れたわしの肩を叩いたゴルディールが、ため息交じりに言った。


「まあお前の場合は仕方ないだろ、別の場所で戦ってたんだからな。俺も作ってやりたかったが、お前の場合は胴回りがある、時間もかかる。なにより面倒くさい」

「建前の後に本音を追撃させるとは、わしをいじめておるのか?」

「弄られたくなければ痩せろ」

「お前さんも手厳しいな。そもそも、この年にもなると痩せにくいのだ。というか、お前さんだって人のことは言えんだろう」

「俺のは筋肉だ、お前のは脂肪だ。違いは判るか?」

「わかる、だが分からん。けど解ってほしいのだよ……」


 わしもため息で返したところで、「まあまあ」とリディルが仲裁に入った。


「でも見たところ、勇者くんの鎧はまだ数回の戦闘くらいなら耐久力的には大丈夫そうだよ」

「そうなのか? 表面は溶けているし穴も開いているし、不安しかないのだが……」

「かなり上等な防具なんだろうね。それに、それだけじゃない何かを感じるよ。あったかい感じというか」


 あったかい……。それはもしかしたら、この鎧に宿る女子たちの想いなのかもしれんな。

 胸元の溶けたレリーフの表面に手を重ね、わしは気持ちを改めた。

 不格好でもいい。いずれは新調するだろうその時まで、わしは傷ついたこの鎧を着続けようと。

 感謝を胸にしたところで、ザッザと砂地を踏む複数の足音が聞こえてきた。


「――オジサン、みんな戻ってきたよ」

「む?」


 楓の声につられて視線を向けると、新調された装備に身を包む女子たちが目に飛び込んできた。

 ライアの鎧は、黒曜石のような艶のある黒を基調に真紅が差し色となっている。造形にドワーフ特有の武骨さは感じられず、むしろ洗練された美しさが際立っていた。しかしながら実戦を軽視しているようなことはなく、間違いなく戦闘に特化した性能を具えているのは言うまでもない。肩当てに模られた獅子も以前より強そうな印象を受ける。


「やはり赤が入っていた方がライアらしいな」

「そうか? でも思ってたよりも軽くて着心地も最高にいいぜ。しかも高防御な上に、動きを邪魔しないように工夫されてんだ」

「それだけじゃないですよ。みなさん共通で、勇者の盾にも刻んだ女神文字により、魔法防御もある程度上げてあります。いつか女神の塔に行った時にでも祝福してもらってください」

「それは助かるわね」


 そう礼を口にしたソフィアに目をやると、見慣れたバーテンダーのような恰好をしていた。目の覚めるような白のシャツに惣闇のようなカマーベストは色の対比が美しい。黒のパンツはぴったりとしつつも伸縮性があり、足技が華麗に繰り出せそうだ。シックな装いがソフィアの美しい金髪をより引き立たせている。


「ソフィアもよく似合っているな」

「やっぱり私はこの服装が一番落ち着きますわ。素材も最高級の物のようですし、このレベルの装備はなかなか身に着けられるものではないですね」

「それはエーデルクルスで採れた最高の光蚕糸と闇蚕糸を使っている。世界樹の葉で育てた蚕の繭糸は、高い魔法耐性とともにその弾力性から物理に対しても抵抗力が高い。ちなみにクロエのローブにも使われているものだ」


 エステルの補足に、クロエはローブをまじまじと見つめ、感心するように頷いた。宵闇色に蒼炎を思わせる色合いの青が差し色になっていて、際立って美しいローブだ。


「ちなみについでに言っとくと、ソフィアのグローブとブーツの複合材には竜鱗と爪を使用してある。攻撃防御どちらも高めておいたぞ」

「爪? 竜の巣から持ち帰ったアイテムの中には入っていなかったと思うが……」


 ゴルディールからレブルゼーレに目を向けると、べったりと顎を地面につけてだらしなく伏せた状態のまま竜は口を開く。


「マディルとの戦闘で折れかけてたからな。どうせ生え変わるんだから素材に使った方がいいだろう」

「それはありがたい話ではあるが。お前さん、ずいぶんと怠けておるな……」

「日中は眠いんだ。魔竜族をなめるなよ」


 それだけ呟いて、竜はため息をふんすと鼻で飛ばした。微風が起こりわしの天パを揺らす。

 こうして見ると、凶悪そうなドラゴンもどこか可愛らしく思えてくるから不思議だな。まあ、クゥーエルの方が優しい雰囲気はあるが。

 しょぼしょぼと目を瞬かせるドラゴンから視線を転じ、皆を見渡す。

 と――、なにやら辞典のような本を携えたエステルが、それをクロエに差し出した。


「クロエ、お前にこれを渡しておこう」

「これは?」

「エーデルクルスの図書館から出てきた古い魔導書だ。中には属性の最上級魔法について記されている」

「そんな大切な物、わたしが貰ってもいいの?」

「一応、写しなら控えてあるから心配はいらない。それにお前はもう賢者の器では収まりきらないくらいの魔力を有している。この原本は賢聖になるための証にもなるだろうから、ぜひ持って行ってくれ」


 柔和な面持ちのエステルを真摯に見返したクロエは、数瞬迷うように目を泳がせたが。ややあってから決意したように頷き、「ありがとう、大切にするね」と魔導書の原本を受け取った。

 皆着実に次のステップを踏んでいる。だが決して一人では到達できない道のりだろう。仲間がいて、こうして助けてくれる者たちがいてこそ、わしらは高みを目指して突き進んで行けるのだ。そんな実感がふと胸に過った。


「――ところであなたたち、これからどうするの?」


 今の今までイルマと一緒にオルハを撫でていたアルティアが、こちらへ振り返りながら尋ねてきた。


「一先ずは、南の町ザクスリードへ行こうと思う。ソフィアが武闘会に出たいようだからな」

「ザクスリードの武闘会か。準決勝で負けた時のことを思い出しちまった」

「そういえば以前そんなことを言っていたな。しかし本当にゴルディール王は出たことがあるのか?」

「血気盛んだった昔にな。」


 血気盛んなのはいまも変わらんだろう。と内心思うわしの隣で、ソフィアが「へぇ」と関心を示した。


「前にも薄っすらと思っていたけど、出場するのは人間だけではないのね」

「ああ。それどころか、出場資格さえ得られれば魔物でも参加出来る大会だ」

「魔物?! ああいや、別に言葉を話せる魔物もいるから不思議ではないか」


 あのゴブリンですら人語を話していたからな。もっと知能の高い魔物もそりゃあいるだろう。しかし危険なにおいもするな、大丈夫だろうか。


「まあ基本は素手でしか出られないから心配はいらないだろ。中には爪なんか使ってくるやつもいるが、魔物にとっては武器であって武器じゃねえから、その辺りはグレーだがな。それでもソフィアなら問題ないだろ」

「そうね、条件がほぼ同じなら負ける要素は皆無だわ」

「ずいぶんな自信だな。ま、それがソフィアか」


 ライアの呟きに、ソフィアはドヤ顔をして胸を張った。

 そこに信頼を置けるくらいには長い付き合いだからな。なにも心配することなどないだろう。

 和やかな雰囲気の中、アルティアはゆっくりと進み出て、やわらかく微笑みながら切り出した。


「……あなたたちには本当に感謝してる。この大地と聖樹を守ってくれたことを」

「聖樹を守ったのはアルティアだ。わしらは魔物を蹴散らしただけ」

「それでも、みんながいなければ成し遂げられなかった。もちろん町のみんなとドワーフの二人、それにレブルゼーレとオルハもね。一致団結してことに当たれたのは、間違いなくあなたたちがいてくれたからだわ」

「その点については素直に礼を受けようと思うぞ。やはりこの世界に息づく者同士、協力すべき時はした方がより強大な困難にも立ち向かえると思うしな」

「そうね。そのことに関しては、私たちも学ぶとともに反省したわ。争うだけではダメ、互いに理解しようとしなければ未来は先細るだけだって。だから……時間はかかると思うけど、ベルファールのことも前向きに考えていこうと思えたの」

「お前さんたちがそう思えたのであれば、わしも体を張った甲斐があったというものだ」


 答えに満足しわしが頷くと、アルティアは木と花で出来た指輪のようなものをわしら全員に手渡してきた。


「この指輪は?」

「友愛の証よ。世界樹の枝と、滅多に採れない枯れることのない世界樹の希少花で出来ている。強大な敵へと立ち向かおうとしているあなたたちへ、心からの無事と勝利を祈りながら私が作ったの。離れていても、私たちハイエルフの心は、いつでもあなたたちと共にある。忘れないで」

「うむ、ありがたく頂戴しよう」

「なんかこういうのは照れるよな、あたしのガラじゃねえっていうかさ」

「こんな時くらい素直に受け取ればいいのよ」

「そうだよ、ありがとうってね」

「でもその気持ちもちょっとわかるかも? まあ嬉しいけどねー」


 それぞれが指に嵌めようとしていたところ。気を利かせたリディルがネックレスチェーンをプレゼントしてくれた。

 これならば戦闘に支障が出るようなこともない。皆でリディルに礼を言い、指輪をチェーンに通して首にかけた。

 話も一段落、といったところで、むくりと起き上がったレブルゼーレがあくびを噛み殺しながら言った。


「くぁあ――……おい、行くんなら早く乗れ」

「ん? もしかしてザクスリードまで乗せていってくれるのか?」

「まあ暇だからな」

「すまんな、手間をかけて」


 続々と竜の背に乗る女子たち。

 わしは微動だにしなかったベルファールへ声をかける。


「ベルファール、お前さんも一緒に行くんだから早いとこ乗るといい」

「……ふん」


 今日初めて発した音が鼻であしらうそれとは……。仲良くなるにはまだ少し時間がかかりそうだな。裸の付き合いでも出来れば良いのだろうが、そういうわけにもいかんし。なによりわしが死にかねん。

 危険な橋は渡らないという選択も時には必要だ。まあ、時を見て、折を見てだな。

 ベルファールも渋々乗ったところで、わしはふと花で思い出した。


「ところで一つ聞きたいことがあるのだが。世界樹の花というのは、花冠が作れるほどあったりするのだろうか?」

「希少花では無理ね。花は実をつける前に咲くものだからそれを待てば……エステル、あと何年くらい?」

「五年ほどですね」

「五年か……」


 城を建てるにはいささか時間的に短すぎる気が。まあ、それまでに億万長者になれる可能性も無きにしも非ずだが……。

 今から皮算用しても詮無いことだがな。


「そうか。まあそのくらいの時期になったらまた来るやもしれん。その時はよろしく頼む」

「誰にプレゼントするつもりなのかは聞かないでおいてあげる」

「お前さんたちに贈ったら受け取ってくれるか?」

「考えておくわ」

「ひ、姫様っ?!」

「八割以上は冗談よ」

「残り二割近くはッ⁉」

「気分次第かしらね?」


 それを聞いてあわあわと狼狽えるエステル。普段の二人はこんな関係なのだなと微笑ましく思った。

 そうだな。その時が来たら、上の世界のリーフィアとレニア、そしてアルティアとエステル用に花冠を作ろう、そうしよう。

 一人ニマニマしながら竜の背に乗って、わしは地上を見下ろした。


「イルマはどうするのだ? もう少しここにいるのか?」

「イルマなら責任を以ってオルハに送らせるわ」

「そうか、それならば安心だな。イルマもわしらに付き合ってもらってありがとうな」

「いえ、私こそありがとうございました。皆さんと旅を出来たこと、一生忘れません」


 涙ぐむイルマに「うむ」と頷き返し、わしは改めて皆を見渡した。


「ゴルディール王、リディル。お前さんたちにも礼は尽きんほど感謝している」

「なに、俺たちはやりたいから協力しただけだ。礼には及ばん」

「あっちもオジジと勇者の装備作れて最高の思い出になりましたよ」

「わしらの方こそ。……すべてが終わったら改めて礼に伺う」

「その時は盛大に宴でも開いてやるよ」

「楽しみにしている」


 そしてアルティアとエステルへ視線を転じた。


「お前さんたちも改めてありがとう。女王にもよろしく伝えてくれ」

「本来なら母様がこの場にいるべきなんだろうけど。気を張って疲れたみたい。まあ私は次期女王だし、これからは私がしっかりしなくちゃね」

「アルティアならば大丈夫だ。勇者のわしが言うんだから間違いないぞ」

「一見頼りないけどね」

「痛いところを突くな……。だが、守り人としてこの大地の未来をよろしく頼む。わしらも世界の未来のために身を捧げる覚悟だ」


 わしの決意を聞き届けたエステルが「ふっ」と笑った。


「お前たちなら大丈夫だろう。姫様の侍女の私が言うんだ、間違いはない」

「うむ、なぜかは分からんがエステルに言われると心強い」

「……気をつけていけ」

「ありがとう」


 旅の無事を祈ってくれた言葉にわしが笑顔で礼を返すと、レブルゼーレは「じゃあ行くぞ」と翼を広げて羽ばたいた。

 皆で地上に手を振って、竜はゆるやかに飛翔していく。

 別れは名残惜しいものだ。だが、皆の笑顔を守るために、わしらは先を行かねばならん。今生の別れではないのだ。いまは前を、ただひたすらに前だけを見よう。

 旅の終わりを迎えるその時までは――

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