第95話 野盗の巣窟

 カルガーラの人々に別れを告げ、北のヴァストール地方を目指すべく町を発った。

 砂漠を越えるとまた一面の大草原が広がっている。東に目を向ければ遠く水平線が望む。どうやら割と海は近いようだ。

 地下世界アルドベルガの最南東にある、絶海の孤島ドラゴニル。クゥーエルを助けるためにも、早いところ船を手に入れなければな。

 なればこそ、ダグハースへ向かう足運びも早足になるというものだ。


「おっさん、あんま張り切りすぎるとすぐ息切れ起こすぞ?」

「わしはそこまで老いとらん。四十三のぴちぴちオヤジだぞ? それに勇者だからな、そのようなみっともない姿は晒さんよ」

「逸る気持ちは分からなくもないですけど、戦闘中にスタミナが切れては事ですわ」

「その点については安心するのだ。亀とカルナベレスを倒したことでレベルが二つほど上がったからな」

「でもあんまりステータスに変化があるようには思えないけど……」

「そうなのだ! なぜか上がる時は上がるが、上がらん時はとんと上がらん。わしはどうやら晩成型のようだな」


 まあもともとのジョブが王様だしな、勇者としての適性が本当に備わっているのか疑問ではある。わしも半分諦めているところでもあるが……。


「ねえみんな、あれ見て!」


 がっくしと肩を落としかけたところで楓が声を上げた。

 指さす方へ目を向けると、草原のただ中にぽつんと大きな馬車が一台。車輪が外れ、幌が破れて風にたなびく様子から、何者かの襲撃を受けたと思われる。

 現場へ急行すると幌馬車だけで馬の姿はなく、草原には点々と血痕が続いていた。どうやら森の方角らしい。

「うぅ…………」と人の呻きらしき音を耳にし辺りを見渡すと、外れた車輪に下敷きにされた御者らしき男の姿を捉えた。


「お前さん、大丈夫か?」

「ひぃいいい! こ、殺さないでくれー」

「安心せよ、わしらはただの旅人だ。お前さんに危害は加えない」


 すっかり怯えていた御者だったが、わしらに敵意がないことを理解したのか、車輪から這い出るようにして姿を現した。

 よほど酷い目にあったのか、その体は小刻みに震えている。


「この惨状はいったいどうしたのだ? 事故と片付けるにはいささか無理な点が多いが」

「……や、野盗に襲われたんだ。ダグハースからサマルクへの行商の途中で」

「野盗? もしかしてそいつらに馬も奪われたのかい?」

「ああ。ゴブリンとホブゴブリンの混成盗賊団だ」

「ゴブリンとホブゴブリンって、ただの雑魚じゃない」


 呆れた口調のソフィアに、「とんでもない!」と男は声を荒げた。


「奴ら、行商から奪ったダグハースの武具を装備してるんだ、それも上等な物を選りすぐって。そのせいかソルジャーやアーチャーなんかを名乗ってる。あんなの、俺たち一般人が勝てるわけがない」

「それなら大丈夫。わたしたち、ただの旅人じゃないから」

「そうそ。このオジサンは勇者で、アタシたちはその仲間だからね」

「あんた達が勇者の一行? 風の噂で聞いたことがある。なんでも化け物みたいな亀を討伐したとか、四天王の一人を倒したとか」


 男はわしらを順繰り眺め、「へぇー」と感心した風な吐息をもらした。端から馬鹿にされないのは久しぶりで少し驚いたが、一応噂は広まってきているらしい。

 気を良くし、わしは男に言ってやる。


「その盗賊団とやら、わしらに任せてみんか?」

「ああ、ああ! ぜひお願いしたい! 奴らのアジトは西の森、小さな村落にあるはずだ」

「分かった、森の中だな。この件、確かに任された。お前さんは幌馬車の修理でもして待っていてくれ。そう時間はかからん」

「わかった、気を付けて行ってきてくれ」


 心配するなと男に言い置き、わしらは血痕をたどって森へと入る。

 森をしばらく進んでも血の痕はずっと続いたまま。残念ながら、恐らく馬はもう生きてはいないだろう。

 それから少しばかり歩いたところで焚火の跡を見つけた。近くには馬らしき骨が散乱している。


「ここで休憩したようだな」

「この骨はあの行商の馬車馬か。惨いことしやがる」

「でもこれで血痕を辿ることも出来なくなったわね。どうするの?」

「手分けして探すにしても、迷ったりしたら危ないし……」

「ん?」


 なぜか女子たちの視線がわしに集まる。心配それすなわち、わしが迷子になるかもしれんということに外ならんだろう。

 強く否定したいが、そうならない自信がない。ふと楓に視線を転ずると、なにやら道具袋を漁っていた。


「楓よ、なにをしているのだ?」

「こういう時こそアタシの式鬼の出番かなってねー。あ、あったあった! ――じゃじゃーん!!」


 と勢いよく取り出したるはいつぞやに見た紙。それも二、三十枚はありそうな量だ。


「そんな大量の式札、どうしたのだ?」

「京を発つ前に、お師匠に黙ってこっそり忍ばせてきたんだー。まあ帰ったら怒られるかもだけど、なにかと便利だしさ」

「それで、そいつで楓は何やろうってんだ?」

「馬を食べたのなら口から肉の臭いをさせてるはずでしょ? それを小鬼に辿らせるんだよ」


 なるほど、と得心する皆の注目を一身に集め、楓はショータイムのように大手を広げた。


「成長したアタシの小鬼をとくとご覧あれ! お師匠直伝、陰陽傀儡操術・鬼!」


 素早く九字を切り終えた瞬間、札が輝きだして見る間に鬼の形を成していく。

 静かに地面へ降り立った鬼は以前とは風貌が違っていた。親指ほどだった二本の角は手の平ほどの長さで大きく反り返り、牙も立派に成長していたのだ。体長はさほど変わらんが、まあ小鬼だから仕方がないか。

 そうして、鼻をすんすんさせる小鬼の後をつけて、わしらはさらに奥を目指す。

 しばらく歩いていくと、「――なにッ! お腹が減ったから馬を食べただと、ゴブ。ホブゴブ団長に知られたらとんでもない! ゴブ」などという怒声が生い茂る木々の向こうから聞こえてきた。

 それぞれバラけ、幹を陰にして様子を窺う。

 すると、廃村と思しき村落にゴブリンが複数体いるのが確認できた。

 しかも行商の男が言っていたように胸当てや鎧、剣や斧などで武装している。

 だが、言ってもたかがゴブリン。いまのわしらにはただの雑魚だ。何体いようと関係ない。

 皆の顔を見渡し、頷き合ってから一斉に飛び出した。

 いっちょ前に槍へ紋章旗を結んだ、今しがた怒っていたであろうゴブリンがギョッと目を見開く。


「な、なんだお前たちは! ゴブ。ここがホブゴブ盗賊団のアジトと知っての襲撃か! ゴブ」

「わしは勇者だが、お前に名乗るほどのものではない!」

「半分名乗ってるが、ゴブ……?」

「魔物の分際で茶々を入れるでない。人々に危害を加える魔物を放っておくわけにはいかんのでな、わしらが成敗しに来たのだ。……お前たちはここで潰えよ!」


 各々武器を取りそして構えると、槍を持っていた一体が血相を変えて後ずさる。


「お、お前たち、馬を食べたことは内緒にしておいてやるゴブ。こいつらを今すぐに叩きのめせゴブ!」

「ゴブ班長はどこに行くんだギ?」

「ボクはホブゴブ団長に報告しに行くんだゴブ! だから早くしろゴブ!」


 部下に前線を任せて自らは撤退する。そんな情けない班長についていこうとする奴などおらんだろう。

「ゴブ班長は卑怯だギ! 待ってぇえええ」と三体のゴブリンは後を追うようにして逃げていった。態勢でも整えるつもりだろうか? いまさら何をしたところで、わしらに倒される運命だというのに。


「さて、わしらも行くか」


 廃村をゆっくりと奥へ進むと、崩れていない民家の前で盗賊団が整列し待ち構えていた。

 その数およそ五十。剣と斧だけかと思ったら、槍や弓を持つものもいる。

 なかでもひと際目立つ面長の魔物。大きな鷲鼻に濃緑の体躯。左目に眼帯をし、鎧兜に身を包んでいることから恐らく団長のホブゴブリンだろうと推測できる。

 二本の剣を鞘から抜いて、ゴブリンたちを押しのけて前へ進み出てきた。


「ホブホブ、お前たちが侵入者か。一体何用だホブ?」

「ホブホブとうるさい奴だ。わしらがなぜ来たのか、想像くらいは出来るだろう? わしよりも頭の悪そうな面のお前でもな」

「ホブを愚弄するか。アジトを荒らした賊は生かして返すわけにはいかんホブ。覚悟は出来てるんだろうな、ホブ?」

「賊が勇者を賊呼ばわりするか。だがまあ無礼は許してやろう。死にゆくものに異を唱えたところで詮無きことだからな。……それに、覚悟をするのはお前たちだッ」


 強く吐き捨て地を蹴った瞬間、それを合図のように開戦する。

 最初に動いたはずなのに、あっという間にライア、ソフィア、楓に追い越された。ちなみにクロエは後方で魔法詠唱。だが間違いなく言えることは、かけっこをしてもわしが勝てる見込みはない、ということだ。

 女子たちの機先を制し、ゴブリンの弓部隊は一斉に矢を放つ。雨のように降り注ぐ矢を避け、またはへし折りながら猛進する女子たち。

 それを見てゴブゴブと笑いながら、ゴブリンどもは今度は三本もの矢を番え再び斉射した。

「七面倒くせえな、邪魔だ!」童子切を抜刀し、その風圧だけで矢を吹き飛ばすライア。待ち構えていた剣部隊に突っ込むと、流れるような太刀筋で次々と斬り捨てていく。


「雑魚が束になったところで所詮は雑魚なんだよ」

「こんな相手にわざわざ全力を出す必要もないわねッ」


 一ヵ所に固まる群れに滑り込んだソフィアは、足払いで浮かせた敵を強かに宙へ高く蹴り上げた。数匹はそれだけで絶命し光と消える。「――楓!」と名を呼ぶと、今度は影のように宙へ現れた楓がまだ息のある連中を忍刀で素早く刻んだ。

 槍持つゴブリンは空中にいる楓に向かって投擲姿勢をとる。いまの状態ならばろくに身動きがとれないと思ったのだろう。なんとも浅はかな。


「判断は良し、けど残念でした。アタシは忍者だからねー、こんな芸当だってお手のものなんだよっと」


 まるでそこに見えない足場でもあるかのように、楓の足は宙を蹴ってもう一段高く跳躍する。ゴブリンの放った複数の槍は残された虚像を貫き、崩れた民家の壁に突き刺さる。

「お礼にプレゼントあげるよ!」手早く両手いっぱいに手裏剣を取り出すと、それを地上に向けて放った。十数枚の小さな刃は高速回転しながら複数体のゴブリンにすべて的中し、その数を一気に減らす。

「――みんな、離れて!」後方からクロエの声。群れの近くにいた女子たちは飛びのいて距離を取る。

 わし、わしは……その場で立ち止まる! 仕方がなかろう、近づけてもいないのだから、離れる必要がないのだ。

 などと少々の不満を心の内で吐露したその時――。

 なにやらゴブリンたちの足元の地面に亀裂が入り、赤黒い光が漏れだした。


「な、なんだゴブゴブ?」「なんか熱いゴブ」「これは魔法だゴブ! は、はやく逃げるんだゴブ!」

「もう遅いよ。ボルキャニックブレイズ!」


 呟いた瞬間、地下から溶岩が爆発的に噴き出した。爆発といっても被害を抑えるために小規模なものではあるが、連中にとっては脅威だろう。

 横並んでいたゴブリンどもは綺麗さっぱり吹き飛ばされ、その熱量によってあっという間に焼却される。光の粒子も見えなかったほどだ。

 清々するほどの気持ちよさだが、しかしこれでは……


「わし、何も出来ずに終わってしまったではないか」

「おっさん、よく見てみろ。まだ残ってんだろ」


 ライアの言葉に辺りを見渡すと、ホブゴブリンが民家の陰からこちらを窺っていた。それはもう恐怖に顔を引きつらせて鼻水まで垂れ流して。


「ほっ、よかったよかった。やはり最後はわしが決めねば締まらんということだな。わはは!」

「笑ってないで早く行ってください。逃げられたらどうするんです?」

「良いのか?」

「大丈夫。勇者さんが倒していいよ」

「アタシたちは見ててあげるからさ」

「む、そうか? ならばお前さんたち、わしの勇姿をとくとその目に焼き付けて今夜のおかずにするとよいぞ! うははは!」


 笑い、駆け出し、そしてホブゴブリンと数メートルのところで相対する。

 すると、涙目で震えていた魔物は目を何度か瞬き、ニタリと品のない笑みを浮かべて民家の陰から出てきた。


「なんだ、お前がオレの相手かホブ。なら楽勝だなホブホブ」

「だからホブホブうるさいのだ。まあよい。分からん雑魚には身をもって思い知らせてやる」

「言ってろ家畜ブタホブ。オレはホブゴブ盗賊団の団長だホブ。お前なんかに負けはしないんだホブホブ」


 ふん、わしが相手だと知って一気に調子を取り戻したようだな。

 このような雑魚になめられるのは不快だが、この醜い顔を見るのもしばしの辛抱。残念なお知らせというのをしてやろう。


「お前はわしを侮っているようだが、わしは上の世界でゴブリンキングを倒している男だぞ? それも勇者になる前の話だ。わしは強い、お前など一瞬で消し飛ぶぞ? クロエの魔法くらい恐ろしいぞ?」

「ゴブリンキングだホブ? どうせ雑魚ゴブが粋って名乗っていただけだろホブホブ」


 ぐっ……なかなか鋭い輩だ。その通りだから何も言い返せん。


「図星だホブ? お前が本当に強いのなら勝負しろホブ!」


 声を荒げ、双剣を交差させて前傾に構えるホブゴブリン。

 恐らく突っ込んでくるタイプの攻撃か。

 わしも魔神剣ネヴュラスを抜き、牡牛の角のように油断なく構えた。

 風が吹き、二人の間を砂煙が横切る。どこからか落ちてきた葉っぱが、ちょうど地面に接した瞬間、魔物はイノシシのように猛進してきた。

 わしはその場で動かない。相手の動きを見極めるためだ。

 突進系の攻撃かと思いきや、案の定、魔物は途中で跳躍した。振り上げられた双剣。

 わしは咄嗟に剣を掲げ、振り下ろしながら唱える「――いきなりワルデイン!」

 まるで避雷針に落ちる雷のように、聖なる雷はホブゴブリンの双剣に落雷し体を焼く。

「ギャァアアアア!」と断末魔を上げてぶすぶすと身を焦がす魔物は、どしゃっと地面に倒れ込み身動き一つ取らなくなった。


「ふん、だから言っただろう、わしは強いと。見た目で判断したお前の負けだ」

「ホブゴブ盗賊団が壊滅するとは、ホブゴブの負けだホブ、ホブ……」


 その場に二本の剣を残して、ホブゴブリンは光の粒子となって消えた。

 なんとも張り合いのない敵だな。アダマンタイタスもカルナベレスもけっこう強かったのに。まさかこんな小物だったとは。


「……つまらんものを焼いてしまった」

「ま、経験値の足しにはあまりならなそうだけどよ」

「少しでも稼いだ方がいいかもしれませんし」

「勇者さんを鍛えるには必要なことだよ」

「この先、苦労しないためにもねー」

「ん? まさか最後に残しておいてくれたのは、わしの為なのか?」


 尋ねると、女子たちは揃って首肯した。


「これからもこの程度で勝てる奴ばかりじゃないだろうしな」

「その時はいま以上の技が必要になるでしょうし。勇者様にはもっと強くなってもらわないと」

「そういうことだったのだな」


 これも女子たちの優しさか。だが、それに甘えてばかりもいられんな。

 この先、もっと強い敵が出てきた時には、わしが進んで受け持つくらいの度量と技量を養っていかねばならんだろう。勇者の宿命に立ち向かうためにも。


「そろそろ戻ろうよ、あの行商の人のところに」

「うむ、そうだな」


 決意を胸に刻み、二本の剣を袋にしまって廃村を後にする。

 草原で待つ行商のところへ戻ると、幌馬車は車輪が付き、牽ける程度には修理がされていた。


「あ、あんたたち無事だったのか!」

「もちろん。わしらは勇者の一行だからな」

「ところで、あんたはこれからどうするんだ? 残念ながら馬はすでに食われちまった後だった。サマルクまで行くには少し遠いぜ?」

「商品がもうないからな。とりあえずダグハースに戻ろうと思ってるよ」

「そう。それなら私たちが護衛するわ」

「いいのかい? それは助かるよ。でも大丈夫なのか、旅の途中なんだろ?」

「わたしたちもダグハースが目的地だから大丈夫だよ」

「アタシたちは船を探しててさ。船が欲しいならダグハースってとこに行くといいって聞いたから」


 行商は「船か」と呟き、「あっ!」と思い出したように幌馬車の荷台へ上る。

 ガサゴソと何かを探しているようだ。しばらくし、「あったあった、これだ!」と荷台から下りてくると、わしに一枚の紙を差し出してきた。

 受け取り紙面に目を落とす。そこには着飾った男女の姿が描かれ、デカデカと文字が書かれていた。


「ベストドレッサーコンテスト?」


 呟くと、女子たちがわしに寄り集まって同じく紙面を覗き込む。

 ああ……これがハーレム城で各々好みの格好をさせたエロいシチュエーションであったならば。今ごろおぱーいがふよふよとわしの肩やら腕を刺激しているのだろうに。……――早く城が欲しい!


「これはなんだい?」

「文字通りのコンテストだよ。出場者がコーディネートした服の見た目や本人のカッコよさ、可愛さ、綺麗さなんかの総合点で競い合う大会さ」

「それでなぜ私たちに?」

「今回の優勝賞品が船らしいんだ。なんでも大航海を目的に富豪が建造させたらしいんだけど、魔物のいる海に航海へ出たいなんてクルーがいなくて手放すことにしたらしい。だから探してるならちょうどいいかなと思ってさ」

「たしかに、魔物がいる海に出たいなんて酔狂な人あまりいないよね」

「買うお金なんてないし、優勝商品なら勝てばタダってことだよね? オジサン、やらない手はないよ!」

「ん? うむ、うむ。そうだな」


 危ない、危うく聞きそびれるところだった。

 なんとなく聞こえていた話を総合すると、このコンテストに出れば良いということだな!


「よし、ではダグハースに着き次第、コンテストにエントリーするとするか!」

「ダグハースは大きい。開催日まではまだ日程があるから、町でいろいろ服や衣装を見てみるといいよ」

「ああ、そうさせてもらう。ではそろそろ行くか」


 そうして幌馬車をわしと行商の二人で牽き、北西地方の町ダグハースへと向かう。

 ここのところ戦闘が続いていたし、しばしの憩いというのも良いだろう。張り詰めていては、いつか擦り切れてしまうやもしれんしな。

 しかし、ベストドレッサーコンテストか。

 ここらでわしのダンディズム溢れる姿を見せておけば、女子たちもきっと股を濡らすことだろうと思う!

 ……うはははっ! 待っているのだぞ、わしの大会よ!

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