ニュー・オーバーテイク 〜淫情剣〜 8
寿子を犯そうとしていた男三人をあっさり撃退した悟は志村がかけているテーブルの前に立った。
「見事な腕前ですが、異能者の方ですか?」
と、志村。この荒れた状況においても、ソファーの上に深く腰掛けており、慌てた様子はない。
「しがない一介の
とは、悟。こちらはフライトジャケットのポケットに両手を入れ、突っ立ったまま志村を見下ろしている。
「悪いが、ちょっと席を外してくれたまえ」
志村は両隣のギャルに促した。
「えー、つまんなぁーい」
彼の右側に座る金髪ギャルが駄々をこねた。
「あとで、遊んでくれるならね」
彼の左側に座る褐色ギャルが志村の耳もとに唇を近づけた。彼女は席から立ち上がると……
「なんならあたし、こっちの一条さんって人でもいいんだけどなあ」
と、良い匂いをさせながら悟の脇を通り過ぎた。ついでに倒れている“歯無し”の頭を踏んづけて……
「あン、待ってよぉ」
金髪ギャルも立ち上がり、悟に……
「お兄さん、さっきのアクションシーン、マジでシビれたよ」
そう言って褐色ギャルのあとを追って行った。ついでに倒れている“顎髭”の背中を踏んづけて……
「かなりのモテっぷりですね。かなわないなあ」
ギャルたちが立ち去ったテーブル席で志村は平然と煙草をくゆらせている。
「志村春高……大学六年生。この店のオーナーらしいな」
悟が訊いたとき、また店内に音楽が鳴りはじめた。
『さあ、おまえら! 騒動はジ・エンドだ。気を取りなおして今宵も踊ろうぜベイビー!』
DJがレコードをスクラッチしはじめた。そのノリに合わせ、客たち皆がまた、いっせいに踊りだす。
「学生起業家とは、景気のいいこった」
「どうも……」
悟の言葉に対し、薄く笑う志村。ここは店の端にあたるせいか、騒々しくとも意外と会話はできるものである。
「起業家どまりなら良かったんだが、ちょいとヤバい方面に踏み込みすぎたな」
「なんのことでしょう?」
「“ゆすり”さ」
悟は楽しそうに踊っている客たちを見た。彼ら彼女らの年齢は様々であるが、ほとんどは二十代の若者だ。
「この四年間ほどの話だが、日本全国で相当数に及ぶゆすりが発生していてね。それらの首謀者がすべてあんただとわかったのさ」
主犯として大学生の志村が浮かんだのは、つい最近のことである。裏ッ返せば、この四年間警察の捜査線上に浮かばなかった、ということだ。なぜか?
「“心理操作”さ」
悟は核心をついた。
「“心理操作によるゆすり”……あんたが実行していた手口さ」
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