第14話



ヤスオの心は、戸惑いと決意の狭間で揺れ動いていた。



この16年、ユリは一度たりともヤスオに嘘をついたことがない。



齢(よわい)40で授かったユリ。



ヤスオ自身の両親も40離れていたため、運動会で、同級生に「アレ、お前のお爺ちゃん? お婆ちゃん?」と、知っててわざとうちの両親を年寄り呼ばわりする奴らに怒りを覚えた。



ユリも親の年齢でいじめられてないだろうかと、避けられない事実を理由に数え切れないぐらいヤスオを心配させた。



ヤスオの目に飲みかけのジュースが二つ映る。



独身生活が長かった故に、逆の立場に立ったこういう経験も一度や二度ではない。高校生の男心は勿論わかる。



ヤスオは、真っ直ぐにクローゼットに向かい、話し掛ける。


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