第13話



【三人称例4ページ】



ユリの部屋に滑り込んだタケルは、父親に見つかったかどうかも分からず、彼女の指示でクローゼットに隠れた。



何故かユリも息を潜め、「ドキドキするね!」と一緒に隠れている。



沢山のドレスの隙間に身を寄せ、二人は向かい合い硬直していた。



「パパ、トイレに入ったみたい」



「ゆ、ユリは自分の家だから、隠れる必要あるのか?」



狭いクローゼットを内側から閉めているので、タケルは自分の心臓の鼓動がユリに聞こえるんじゃないかと不安な反面、強がりを言った。



ユリは頭をタケルの胸にあずけると、優美な気品で語り掛ける。



「お願い、今はこうしていたいの」



暗闇の中、手探りでタケルの腕を握りしめ。ユリの桃色吐息が思春期男の勃起を駆り立てた。同時に、理性と本能の狭間で、一本の光がタケルの心を揺さぶる。



「ユリ、お前にだけは、何もかも包み隠さず言う」



ユリの返事は、握られた腕の感覚で理解できた。



「俺は今、興奮している。ユリのお父さんが、この家に居ることを百も承知でだ」



ジャー



ヤスオは用をたし終え、一直線にユリの部屋へと向かった。



コンコン――



ノックの後、ドアが開く。



――カチャ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る